元WWEスーパースターFUNAKIのプロレス・セミナーに潜入!――「フミ斎藤のプロレス講座」第19回【後編】

 元WWEスーパースター、FUNAKIのサイコロジー・セミナーに潜入した。といっても、いったいなんのことかよくわからないかもしれない。わかりやすくいえば、元WWEスーパースターのFUNAKIがプロ選手を対象として開講したプロレス・セミナー=サイコロジー編である。

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斎藤文彦

斎藤文彦

 ローリングの理論のあとはロックアップについてのレクチャー。プロレスの試合におけるファースト・コンタクトは、ロックアップlock up=カラー・アンド・エルボー・タイアップである。

「(試合で)いちばん最初の動きで、いちばん重要なのがロックアップ。ここでお客さんにオーッと思わせる。かんたんに組まない。スナップを効かせてガッチリ組み合う」

「お客さんに見せるためだから、顔をしっかり上げて顔を見せる。体を見せる。おたがいの顔が見えるように。アゴはちょっと上げ気味で、下は向かない。(対戦相手と)目と目が合って、アイ・コンタクトしてからロックアップする」

「リングのまんなかでロックアップすること。端っこのほうでロックアップするのはダメ。ロープに近いところだったら、すぐにレフェリーがブレークに来るからね」

 ローリング、ロックアップのあとは、ロックアップした体勢からのアームドラッグ(巻き投げ)とそのポジションに関するレクチャーだった。ローリング(受け身)の講義は、投げられたほうが投げられたあとすぐに起き上がって相手の方向にむきなおす動作の“なぜ”だったが、アームドラッグの講義は、投げたほうが投げたあとにすぐに起き上がって相手の方向にむきなおす動作の“なぜ”の説明だった。

「(アームドラッグで)投げたほうは、投げ終わってからすぐに左にターンしてスタンダップstand upね。投げる方向はつねに対角線のラインで」

「立ちあがったら、すぐにリングのまんなかをキープ。まんなかよりもやや後ろのほうがいいかな。リングのまんなかにルーム(空間)をつくるように。そこからまたスタート」

「きょうはとにかくリング内でのポジションの取り方を勉強しましょう」

 プロレスのリングはあくまでも正方形だけれど、どうやらFUNAKIの頭のなかには目に見えない“対角線のライン”とリングのまんなかの“円”がきっちりと描かれているらしい。

 アメリカのプロレスはベビーフェース=正統派とヒール=悪役の闘いが基本形であることはいうまでもない。ベビーフェースはいいやつだから反則はしないし、お客さんもこちらを応援する。ヒールは悪いやつだから、もちろん悪いことをする。ロープを握ったり、場外に逃げたりするのはヒールの動作である。

「フラットflat(平らな、平坦な、起伏のない)な試合、フラットにみえるレスラーがいちばんよくない。リングの上でいまなにが起こっているかを体と顔の表情でお客さんに伝えるんです」

「投げられたらくやしいでしょ。頭にくるでしょ。だから、すぐに立ちあがってまた向かっていく。その感情がお客さんに伝わるんです。そういう“なぜ”がわかってくると、知らず知らずのうちに(リングの)まんなかをキープできるようになるし、どうしてそうなるかを伝えることができれば、お客さんもそれを観て納得する」

「これはアメリカのやり方。だから、みなさんはそれぞれ自分のキャラクターやスタイルをよく考えて、自分に合ったものをいろいろミックスしていけばいい」

 リング・サイコロジーというと、お客さんへのアピールや大げさなジェスチャーなどを連想しがちだけれど、じつはロックアップ、受け身を取ってから立ちあがる動作、ベーシックなアームドラッグ(巻き投げ)、リング上でのポジショニングといった基本的な動きのなかにこそプロレスのいちばん基本的なサイコロジーが埋め込まれているのである。

 ローリング、ロックアップ、ロックアップからアームドラッグまでの動きとその“なぜ”を解説したところ――サイコロジーのイロハのイを勉強したところ――で3時間のセミナーはあっというまに終わった。今回のセミナーが“非公開”だったのは、その講義内容があくまでも“やる側”を対象としたものであったからだろう。

“やる側”には“やる側”のサイコロジーがあるように、“観る側”には“観る側”のサイコロジーというものがあるのかもしれない。それとも、プロレスの奥義とは、近づけば近づくほど深遠になっていくものなのだろうか――?

文責/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

※このコラムは毎週更新します。次回は、12月17~18日頃に掲載予定!


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