オリンパス事件 驚くほどの軽犯罪で終わるのか?
「オリンパス事件」を覚えているだろうか? 2011年7月に会員制月刊誌『FACTA』が粉飾決算の実態を暴き、それを問題視したマイケル・ウッドフォード社長(当時)の解任劇を経て、表面化した経済事件だ。この事件が、今思わぬ展開を見せている。
オリンパスは2007年から2011年にかけて、金融商品の簿外処理やのれん代の架空計上により、各年度の連結純資産を最大で1200億円も水増し。バブル期に始めた財テクで抱えた損失を隠すために、オリンパス本体から損失を切り離す「トバシ」を繰り返していたことが、そもそもの発端だった。
2012年2月に東京地検特捜部と警視庁捜査2課は強制捜査に踏み切り、オリンパスの菊川剛前社長、森久志前副社長らに加えて、“指南役”とされた投資会社社長らを逮捕・起訴。2013年7月には東京地裁で菊川前社長らに懲役3年執行猶予5年の判決がくだり、一区切りついたのだが……2014年末、指南役の裁判では意外すぎる判決がくだされたのだ。司法担当記者が話す。
「指南役の一人とされ、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪に問われていた中川昭夫氏に対して、12月8日、東京地裁は懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡しました。有罪判決ではありましたが、求刑は懲役3年ですから、言ってしまえばしょんべん刑。おまけに、検察側は中川氏の“共同正犯”を主張していましたが、判決では『ほう助にとどまる』と結論付けられました。要は、中川氏は積極的にオリンパスの粉飾決算に協力したわけではない、というわけです。これは、『中川らと共謀のうえ~』と共同正犯を前提に、言い渡された菊川氏らの有罪判決と相反する内容。とりあえず有罪にした、という程度の判決だったんです」
付け加えておくと、今回「ほう助にとどまる」と結論付けた裁判長は、菊川前社長らに有罪判決を言い渡した人物でもある。同じ、裁判長が見解の異なる判決をくだしたのだ。
検察側からすれば、大誤算。指南役主導で粉飾決算が行われたという筋書きが崩れたのだから当然、控訴するものと思われたが……結局見送り、中川氏側が控訴に踏み切ったという。
「一事不再理の原則に従えば、菊川氏らの判決要旨と異なる判決が中川氏に下されたことを争うことはできませんが、中川氏は無罪を主張して徹底的に戦う構え。控訴を見送った検察側からは新たな証拠が出てくるとは思えないので、高裁で判決が覆る可能性も十分ありそうです」(司法担当記者)
この中川氏の裁判のほかにも、指南役とされる人物の裁判は続いている。こちらも間もなく結審するが、仮に「ほう助」に止まれば、実質的に“経営陣主導”で粉飾決算が行われたことが結論付けられる。
ちなみに、このオリンパス事件には被害者が存在しない。現在のオリンパスの株価は事件前よりも高く、解任されたウッドフォード氏は労働審判でオリンパスと和解し、12億円もの和解金を手にしたからだ。大騒ぎしてみたものの、実は拍子抜けするほどの軽犯罪にすぎなかった……そんな可能性をはらんだ経済事件なのだ。 <取材・文/池垣完(本誌)>
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