ホーキング博士が亡くなる直前まで「人類はあと100年」と警告し続けていた理由
3月14日、“車いすの天才物理学者”として知られるスティーヴン・ホーキング博士が亡くなった。博士は晩年、「人類に残された時間はあと100年」と、多くの“警告”を繰り返し発していた。
亡くなる直前まで、人類への警告を発し続けたホーキング博士。その発言は専門外の分野にまで及び、晩年になるとより強く警鐘を鳴らすようになった。それはなぜなのか? 博士に関する記事を多数執筆している、国際政治経済学者の浜田和幸氏はこう語る。
「博士は家族に対する強い思いがありました。彼は21歳のときにALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症、人生の大半を車いすで過ごし、多くのハンディを伴いながら研究活動を続けてきました。そしてそれは、最初の妻と3人の子供たちに支えられていたのです。『人類はあと100年しかもたない。このままでは、子供や孫が暮らしていけなくなるに違いない』という危機感が、余命を意識するたびに募っていったのでしょう」
AI技術に詳しい京都造形芸術大学の谷崎テトラ教授は「博士の警告は『このままいけば』ということで、『人類の進み方によっては、破滅を回避できる』という意味も含んでいます」と指摘する。
「例えばAIの進歩は、世界のさまざまな問題を解決することに活用できます。個人の頭脳では不可能な膨大なデータ処理を担い、『最適化』つまり最良の選択肢を用意することが可能になります。AIは地球温暖化対策を策定するのにも有用ですし、戦争や貧困をなくす方向に活用することもできます。結局は、人類がどういう未来を選択するかにかかっているのです」
博士は自身が出演したドキュメンタリー映像『スティーヴン・ホーキングの一番好きな場所』のなかで、「人類は特別な存在だという考えを捨て、思いやりと謙虚さをもって行動しなければならない」と語っている。
「これまで人類は科学技術を飛躍的に進歩させる一方で、破壊や対立も巻き起こしてきました。今後は”人間らしさ”がより必要になってくる時代です。傲慢さを捨てて欲望をコントロールし、何としても現在の危機を克服しなければならない。我々は、博士の言葉を深く心に刻むことが必要でしょう」(浜田氏)
取材・文/志葉 玲 北村土龍(本誌)
― ホーキング博士の遺言 人類はあと100年で滅ぶ ―
「100年で終了」かどうかは人類の選択にかかっている
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