“薄さ”を追求するのは日本だけ…コンドームメーカーが「安易に海外進出しない」理由
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
日本でコンドームの製造を行っている上場企業に、オカモトと相模ゴム工業、不二ラテックスの3社があります。オカモトは国内シェアトップで、他社を大きく引き離して独走しています。研究開発を重ねた相模ゴム工業は、競合の不二ラテックスを一歩リードしました。
オカモトと相模ゴム工業が躍進するきっかけとなったのが、「薄さ」。付加価値の高いコンドームを生み出した各社の違いを見てみましょう。
オカモトの2023年3月期のコンドームを含む生活用品の売上高は324億7300万円でした。相模ゴム工業が44億7500万円、不二ラテックスが23億2200万円。オカモトは業界リーダーとして他社を寄せ付けない確固たる地位を築いています。
日本のコンドーム産業は「薄さ」を抜きに語ることができません。もともとコンドームはヨーロッパが産業をリードしていました。しかし、避妊が罪とされるキリスト教圏においては、薄さを追求すると避妊に対する安全性が失われるという意識が強く、薄型コンドームの開発には後ろ向きでした。文化の違いから、日本は薄さを追い求める土俵がありました。
日本初のコンドームが生まれたのは1909年。当時の厚さは1ミリ。使用感が悪く、高級品でもあったためにほとんど普及しませんでした。オカモトの前身である岡本ゴム工業が、1933年に厚さ0.1ミリで柔らかく、使用に耐えられるコンドームを開発します。この商品がコンドーム産業を大きく変えました。
オカモトは、1968年に厚さ0.03ミリというコンドーム界のイノベーションを巻き起こしました。この商品は翌年販売され、数十年に渡るヒット作となります。オカモトの「003」という商品を見かけた人がいるかもしれません。この商品は今なお現役です。
オカモトが薄さを追求したことにより、日本のコンドーム産業は海外製品の参入という脅威から守られました。日本のコンドームは価格選好度が低いことで知られており、たとえ海外の製品が安く入ったとしても普及しませんでした。徹底的に顧客に目を向けた日本メーカーの勝利でした。
薄さを追求し続けてトップシェアに
0.03ミリは「コンドーム界のイノベーション」
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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