元自衛官の女性が定年後、“BL専門”の漫画喫茶を開業したワケ「男性どうしが自由に愛しあえる世の中に」
50歳を過ぎてからの転職は、強い勇気と決断力が必要だ。特に前職とはまるで異なる業種の場合、新しい世界へ飛び込むのを躊躇してしまう人も多いだろう。
メイドカフェや美少女フィギュアの店が軒を連ね、「西の秋葉原」の異名をとる大阪の日本橋(にっぽんばし)。メインストリートは「オタロード」と呼ばれ、春には日本最大級のコスプレイベントも開催される。
そんなオタクの聖地にそびえる年季が入ったマンションに1月29日、『BL漫画喫茶 ぢゅあん』がオープンした。40平米の部屋に現在6,200冊強のBL漫画がぎっしりと並んでいる。
「定期的に東京へ行って、書店や同人誌即売会で一度に200冊は購入するので、まだまだ増えますよ」
ぢゅあん店長のとぢこさんは、そう語る。これらの蔵書はなんと、すべてが「私のコレクション」だというから恐れ入る。彼女の目利きの確かさにはファンも多く、遠く宮城県から訪れるBLオタクもいるのだそうだ。
冊数の多さのみならず、カテゴリーの多彩さも目を見張る。BLに門外漢な筆者は、男性どうしが背徳の恋愛をする物語ばかりだと色眼鏡で見ていたのである。
「BLって実はジャンルが豊富なんです。異世界転生ものや、しっぽが生えている獣人ものなどファンタジー要素を含んだ作品もあるし、アニメ化された『ただいま、おかえり』のようにハートフルなホームドラマもあります。最近人気なのは男性が妊娠して子育てをする“オメガバース”系。漫画喫茶を開くことで、BLといえば性的な漫画だという先入観を払拭したかった気持ちはありますね」
今年(2024)1月に「ボーイズラブ(BL)専門」というユニークな漫画喫茶を開いたとぢこさん(55歳)は、元自衛官という異色の経歴を持つ。31年にわたり自衛隊を定年まで勤め上げ、退職金を元手に起業したのだ。自衛官からBLの世界への大胆なジョブチェンジをした彼女を待っていたのは、果たして薔薇色の日々だったのか。ウワサのお店を訪ねた。
6200冊ものBL漫画がぎっしり
人気は「男性が妊娠するオメガバース系」
京都在住。ライター兼放送作家。51歳からWebライターの仕事を始める。テレビ番組『LIFE 夢のカタチ』(ABC)を構成。Yahoo!ニュースにて「京都の人と街」を連載。著書に『ジワジワ来る関西』(扶桑社)などがある。X:@tomokiy
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