ハーフはモテる、英語ができる…という“偏見”に本人たちはウンザリ
普通にアルバイトをしていたら、ヘルプで送られてきた派遣のおばさんが突然隣に来て、初対面で挨拶もなしにいきなり、『なに?外人?外人?』としつこく言ってきてすごくショックでした。みんなと同じように仕事してるのに、なんで私だけそんな無神経な扱いをされなきゃいけないのかと傷つきました」(母親がロシア人の女性)
喩えるなら、ただゲームセンターにいるだけなのに「お前何中だよ?あ?あ?」と絡んでくるヤンキーを想起させるエピソードだ。
◆出身地を聞いてどうする!?
ストレートに「ハーフなんですか?」と聞いてくる人もいるが、中には少し遠まわしに「出身はどちらなんですか?」と聞いてくる人もいる。心の狭い筆者は思わず「てめえは毎度会う人間、会う人間、全員に出身聞いてんのか!?」と声を荒げそうになってしまう。
ひとくくりに「ハーフ」と呼ばれる人の中にも、海外で生まれて日本に引っ越してきた人もいるし、日本生まれもいる。筆者のように東京は小平生まれの立川育ちという人間は最悪である。相手は本当に出身地が気になるわけではなく、単に「面白い」返事を期待していることが多いので、ギャグだと思って「え~ウソ~」と笑い始めたり、ひどい時には、急につまらなそうな表情になりその場を去ってしまう始末。西東京に失礼だろ!!
◆お前の名前はそんな面白いのかよ!
同じく多いのが、名前に関する質問である。自分の周りにも親の出身国の名前を授かった人もいれば、日本の名前の人もいる。
「例えば自己紹介で『田中です』などと名字を答えても、次には『下の名前は何なんですか?』と聞かれます。『洋です』って答えると『ミドルネームはないんですか?』などと聞いてきて、相手が“満足”する答えがないと延々尋問される羽目になるんです」(父親がドイツ人の男性)
おそらく相手は「長谷川・アーリア・ジャスールです」とか「マイケル中村です」みたいな答えを勝手に期待しているのだろうが、もはや相手の名前を知るという自己紹介の趣旨からずれているような気がする。中には普通に名前を答えたら「なんだ。つまらないの」などと言われたケースもあるそうだが、そんなあんたの名前はどうなんだよ!とつっこみたくなってしまう。
◆「日本語が上手」って日本生まれですから!
「ハーフ」と言っても、日本で生まれ育ち、日本の学校に通った人なら、基本的に日常生活は日本人と変わりない。しかし、生まれが日本でも、どうも在日外国人などと同じに考えられることが多い。例えば日常で普通に日本語を使っているだけで絡まれることもある。
「普通に兄弟と話していたら、知らないおばあさんがやたらと『日本語上手ねえ。どこで覚えたの?』ってしつこくて。日本で育っただけなのに、『偉い。立派ねえ』って言われて、すごく気持ち悪かった…」(フィリピン人の母親を持つ男子)
また筆者の弟が牛丼チェーンで飯を食っていた時のこと、近くのバカップルがじろじろ見ながら「あいつ箸使ってるよ!」とゲラゲラ笑っていたので、「あ~っ!牛丼うめぇ~!」と言ったら目が点になり、押し黙ってしまったという。
◆英語は話せませんが何か?
また、中には日本語しか話せない人もいる。そんな人たちもトラブルは絶えないようだ。
「英語なんて全然話せないのに、やたら英単語を発音させられたりしてすごく面倒です。みんなと変わらないのに『すご~い!超上手~!』とか言われてイライラしますね」(父親がオーストラリア人の男性)
「ハーフ」と呼ばれる人たちみんながバイリンガル、トリリンガルだとは限らないのだ。
◆「ハーフ」はモテる神話はウソ!
これは「ソース=俺」で片づくのだが、一応分析してみよう。ものすごく幼稚なところから説明すると、テレビに出ている人たちは美男美女だから出てるんですよ、ということ。あれがデフォルトかのように勝手に期待されても困るのだ。
「合コンなんかで事前に『ハーフ』って言葉だけが独り歩きして、実際会うと白人系じゃないから露骨にがっかりされたりして悲しかった。自分勝手に色々イメージされても困る…」(インドネシア人の母親を持つ女性)
ひとつ断言させてほしいが、モテない奴に国境なんてない! どんな人種、どこの国だろうがモテないもんはモテないのである!
◆日本に偏見をもっている……という偏見
アメリカ人の父親を持つ男性(28)が彼女と引っ越し先を探そうと、不動産屋と物件巡りをしていた時のこと。
「最初からあれこれ出身地とかを聞いてきて、日本生まれですって言ってるのに、どこの物件に行っても『日本の家はアメリカと違うのよ、ウサギ小屋なのよ』って説明してきてウンザリ。あと、合コンや仕事で他人と飲みに行くと『日本人は××だって思ってるんでしょ~』とか勝手に決めつけられます」(アメリカ人の父親を持つ男性)
そっちのほうがよっぽど偏見もってるじゃねえか!という感じである。
◆「ハーフ」だって全員違う
結局のところ、その人間を決める要素というのは無限にある。単に「ハーフ」と呼ばれる人たちも国籍、出身地、名前はもちろん、千差万別な人生を送ってきたうえでその人間になっているのだ。それを使い勝手のいい言葉や、自分のイメージで一まとめにするのはやめてほしい。たしかにちょっとした興味を口に出しただけで、悪気はないのかもしれないが、大した理由もないのに何百回と同じ質問に繰り返し答えなければいけないのは苦痛だ。そして筆者がなにより言いたいのは、小平生まれの立川育ちと答えたらがっかりするのはやめてくれ、ということだ!
こんな「ハーフ」たちの声を集めたのが、週刊SPA!9/11発売号の特集「一般人ハーフのトホホな日常」。筆者も座談会で登場しています。 <取材・文/ライター 林バウツキ泰人>ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
昔に比べて増えてきた国際結婚。30年前と比べるとその件数は4倍以上になっている。それにともない日本人と外国人の親を持つ子供、いわゆる「ハーフ」の数も増えている。テレビでも「ハーフ・タレント」はもはや一つのジャンルになりつつあるが、そんな「ハーフ」と呼ばれる人たちの悩みや愚痴を、自分自身ポーランド人の母親を持つ筆者・林バウツキ泰人が集めてみた。
◆まず「ハーフ」って言葉が変!
まずは「ハーフ」という名称そのものだ。英語で説明する場合、筆者の例だと“Half Japanese, half Polish.”となる。しかし“Half”という単語だけだと、「半分」という意味にしかならないので、意味を成さない上に、あまり気持ちのいいものではない。片方の親が外国人であるという意味において使う「ハーフ」は、「ナイター」などと同じで和製英語なのである。
なにより感じるのは「ハーフ」という手軽な言葉でまとめられることによって、単に外国人の親を持つ人となり、もう一方の国のアイデンティティが無視されることだ。海外で日本という国の人間なのに、毎度「あいつはアジアンだよ」と言われるようなものである。なので「ハーフなんですか?」と聞かれると、少し面倒だがいつも「半分ポーランド人です」と答えるようにしている。相手に悪意がない場合はまだマシだが、こんなとんでもない例もある。
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