更新日:2022年06月23日 14:37
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泊原発周辺の生態系がおかしい!?

―[原子力07]―
【泊原発の廃炉を求めて提訴】 2011年8月、北海道泊原発3号機が運転を再開。福島第一原発事故の後に世界で初めて運転を再開した原発となった。同月には’08年のプルサーマル計画シンポジウムでのやらせ問題も発覚し、計画は当面白紙に。疑惑が高まる泊原発の廃炉を求めて、市民団体「泊原発の廃炉をめざす会」が11月11日に札幌地裁へ提訴した ◆「昔、原発があった」と早く言えるように
突然変異のバラ

赤い花びらの中に若い緑色の花が二重に咲いているバラ。チェルノブイリで発見されたものと同様の奇形

福島の事故が起きるずっと前から地元で反原発の活動を続けてきた草の根運動家、斎藤武一氏。 泊村からわずか5km離れた岩内町に生まれ育った斎藤氏は、原発の温排水の影響を調べるため、30年以上も岩内港の海水温を測ってきた。温排水のせいで海水温は平均0.3度上昇している。0.1度の変化で魚は生息地を変えるので、今では特産品だったスケソウダラが捕れなくなった。’90年に岩内で見つかった突然変異のバラを世間に訴え、北海道の市町村別がん死亡率を自力で調べて死亡率1位が泊で2位が岩内と知り、さらに原発近隣区域の雨と乳がん死の関係を探ると年間降雨量が最も多い小樽市で乳がん死亡率が最も高いことを突き止めた(放射能の影響を知らせる専門の調査はまだない)。まるで草の根の科学者のような人だ。「廃炉の会」では、原告団の代表を務めている。 「原発なんて何もいいことはない。子供たちが心配だし、毎日、海は温められ殺されている。北海道には、原発の前に150年くらい開拓の歴史がありました。次は、原発をなくして真の民主主義を確立していくための“新しい開拓の時代”をつくりたいですね」

雪が舞い散る取材当日も海水温を測る斎藤氏この日は11℃。風の強い冬の日に海水を汲み上げるのは、ときに命がけの作業だ。岩内に生まれたことを我が運命と感じている

新雪のように真っ白で仄かな理想が、そこにあった。 エネルギー技術の日進月歩を思うなら原子力発電はもはや旧式のもの、と呼んでもいいのだろう。発電所の建設に膨大なコストがかかり、万一、事故を起こしたときの損害費用は無限大。熱効率も30%と低いから大量の放射性廃棄物が空へ海へと流れ出る。実は北海道電力は北ガスとの共同事業で’18年より小樽港にて液化天然ガスを用いた火力発電を開始する予定でいる。こちらのほうの熱効率は60%を超える。今年10月に発表されたこの新案を好意的に解釈するなら、もしかしたら北電自身そろそろ原発を卒業したがっていて、代替エネルギーを真剣に考え始めた、と想像することもできるのだが……。いずれにせよ原子力発電は人間の理学の想像力が作り上げた怪物。怪物を早々に退治しなければ、日本の明るい復興は見えない。 札幌地裁への提訴を終えた「廃炉の会」は11月13日に記念講演会を開き、700人の聴衆を札幌市民ホールに集めた。北海道帯広市に生まれ、札幌に暮らす小説家・池澤夏樹氏が講演を行った。 池澤氏は「原子力発電は、スピードはあるがハンドルがない自動車のようなもの。最終的にコントロールできるのは人間の倫理観だろう」と語り、こう締めくくった。 「原子力エネルギーは結局のところ人間の手に負えない。だから『昔、原発があった。怖いもんだったねえ』と早く言いたいものです」 取材・文/長谷川博一
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