泊原発「廃炉の会」 本格的な法廷闘争へ
―[原子力07]―
【泊原発の廃炉を求めて提訴】
2011年8月、北海道泊原発3号機が運転を再開。福島第一原発事故の後に世界で初めて運転を再開した原発となった。同月には’08年のプルサーマル計画シンポジウムでのやらせ問題も発覚し、計画は当面白紙に。疑惑が高まる泊原発の廃炉を求めて、市民団体「泊原発の廃炉をめざす会」が11月11日に札幌地裁へ提訴した
◆原告612人、弁護士 60人超の大規模訴訟
原発再稼働を進めた高橋はるみ北海道知事の支持母体である政治資金管理団体「萌春会」の代表は、北海道電力の前会長。また、’08年のプルサーマル計画のシンポジウムでは、電力会社と道職員がやらせ意見を誘導したという事実が判明している。「原子力村」とよく似た利権の構造が、ここにもある。
「これまで裁判でどんなに問題点を指摘しても、五重、七重の壁があって絶対に原子炉は壊れないと電力会社は主張してきた。でも今回は安全神話が崩れた後の本格的な法廷闘争になる。しかも道の過去5年の電力最大需要と供給力の関係を調べると、原発がなくても十分な発電能力があることがわかっている。今回は絶対に勝てるでしょう!」
「廃炉の会」共同代表を務める小野有五・北海道大学名誉教授(環境地理学)は、笑顔でそう語る。
同会が立ち上がったのは’11年7月。またたく間に道内外から支援者が集まり、わずか4か月の準備期間ながら原告団の数は612人を数えた。しかもバックには60人を超える弁護士たちが控えている。事務局長を司る菅澤紀生弁護士は、参加の理由をこう語る。
「3・11のあの状況を見て、弁護士として何ができるのかを考えたんです。それで、もしかしたら自分の経験や知識によって、我が愛する北海道くらいは守れるかもしれない、と。原発を推進している経団連の影響は北海道にはあまり及ばない。それに面積が広いせいか、電力会社と住民との地縁・血縁関係も他県ほど濃くはない。住民は自分の声を出しやすいから反対運動も盛り上がる。その辺もメリットになるでしょう。今回、福島では農業や水産業が大打撃を受けました。北海道の『食糧庫としての力』を国が重視するなら、泊くらいは止めようかと考える向きもあるでしょうね」
今後は弁護団の全国連絡会を通じて、泊だけでなく青森県大間原発や愛媛県伊方原発の反対訴訟とも連携を取り合っていくという。
⇒「泊原発周辺の生態系がおかしい!?」に続く
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取材・文/長谷川博一 ハッシュタグ