急成長する「日本のeスポーツ」、浮上してきた問題点――ソーシャルゲームはフェアに競えない!?

賞金総額5000万円、2000万円の大会が登場するなど、かつてないほどの大きな盛り上がりを見せている日本のeスポーツ業界。華やかな大会が開催されている一方で、日本ならではの問題や課題が生まれていた!

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ようやく急成長してきたが、その分、浮上する問題点


 海外のリサーチ会社・Newzooが発表したリポートによると、eスポーツ業界の’16年度の推定市場規模は、4億6300ドル(約537億円。1ドル=116円で換算)になるといわれている。eスポーツとは、エレクトロニック・スポーツの略語で、コンピュータゲームで行うスポーツや競技のこと。eスポーツは海外で特に盛んだったが、今、日本でも大きな注目を集めているのだ。

筧 誠一郎氏

日本eスポーツエージェンシー(通称、JeSA)の代表取締役。早くからeスポーツの可能性に着目し、eスポーツの普及に努める

「eスポーツに関わり始めて9年目になりますが、最初の凄惨な現状に比べると今は夢のようです」とうれしそうに話してくれたのは、日本eスポーツエージェンシーの代表取締役を務める筧誠一郎氏。

「日本はゲーム大国ですが、ゲーム=子供が遊ぶものという偏見が強い。また、ゲームがうまくても将来性がないという考えなどから、日本にはeスポーツの文化がなかなか定着しなかったんです」

 だが、ここ数年でeスポーツを取り巻く環境は一変する。

「昨年に海外で賞金総額が約22億円の大会が開催されたほか、日本初となる給与制のプロゲーマーチームの誕生や、プロゲーマーを育成する専門学校が開校されるなど、とにかく明るい話題が多くて。テレビで取り上げられる機会が増えたことで、日本の多くの方や企業にeスポーツが浸透しました」

 これにより、eスポーツの大会はもちろん、スポンサーを務める企業や、プロゲーマーを所属させる企業が増えたというワケだ。前述の給与制プロゲーマーチーム“DetonatioN FocusMe”を率いる梅崎伸幸氏は、日本のeスポーツ業界の伸び率を「正直、期待以上です」と語る。

 また、国内で行われる大会で高額賞金が設定されたのも話題に。1月30日・31日に千葉県の幕張メッセで開催された闘会議2016では、ソーシャルゲームの『モンスターストライク』が5000万円、『モンスターギア』が2000万円の賞金総額を設定した。

ソーシャルゲームはフェアに競えない?


梅崎伸幸氏

日本初の給与制プロゲーマーチーム、“DetonatioN FocusMe”のCEO。チーム運営だけでなく、eスポーツの発展に尽力している

 だが、現状を喜んでばかりもいられない。梅崎氏は「プレイヤーの多いソーシャルゲームで大会を行うのはいいと思います」と前置きしつつも、「課金要素が強いソーシャルゲームタイトルの大会をeスポーツとは呼び難い」と語る。

「プレイヤーのスキルよりも課金アイテムによるレベル差が大きく出てしまうのは問題です。課金をすればするほど有利になるというルールは、フェアじゃないのでスポーツとはいえませんよね。日本のeスポーツは、お金をかければ勝てると勘違いされても困ります」

 では、大会参加者はどのように感じたのか。次回は闘会議2016のリポートと併せて、『モンスターギア』の決勝大会に臨んだ、ある選手の声をお届けする。

多くの来場者で盛り上がった“闘会議2016”の舞台裏


闘会議2016

多くの観客が集まった『モンスターストライク』のイベント。別の日に行われた賞金総額5000万円の大会にも多くの人が来場。

 1月30・31日の2日間で、4万7588人の会場来場者と、687万8290人のネット来場者を動員した、ゲーム実況とゲーム大会の祭典“闘会議2016”。『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』、『スプラトゥーン』など、人気タイトルに多くの人だかりができている一方、高額の賞金がかけられた大会が行われているにもかかわらず、会場に人がまばらなステージもあり、温度差が印象的だった。『モンスターギア』の決勝大会に参加したAさんも、「想像していた以上に観客が少なかった」と肩を落とす。

「『モンスターギア』は、アクション性が高くて非常におもしろいゲームだと思いますが、タイムアタックのルールだったので、知らない人は何が起きているのかわからなかったのかもしれません。遊んでいる人も、課金ありきの大会では参加しにくかったのでは」

 そんなAさんの課金額は、8万円程度。素人目から見ると、かなりお金をかけているようだが……。

「決勝大会に進んだ方の中では、僕はお金を使ってないほうですよ。優勝したチームのメンバーは、強い装備が登場するたびに10万円、20万円を課金して最大まで強化するのが当たり前だと聞きました。おそらく、各自が数百万円は課金しているんじゃないかな」

 ある程度はプレイヤーの腕でカバーできるそうだが、「課金額による壁は越えられない」とAさんは語る。

「決勝大会に参加したチームの装備や構成はほぼ同じでした。ですが、装備を最大まで強化しているかどうかによって、同じ装備でも2~3秒、多いと5秒以上の差がつきます。こうなると、プレイヤーの腕だけで差を埋めるのは難しくて……」

 それでもAさんは、課金ありきのルールを否定しないそうだ。

早急な対応が必要な大会ルールの厳正化


「課金で強い装備を入手して強化するのは、ソーシャルゲームの楽しみのひとつですから。ただ、ソーシャルゲームで賞金のかかった大会を行うなら、課金の限度額を設定するなどして、より多くのプレイヤーが参加できるようにしたほうがいいとは思います」

 ルールの厳正化には、前出の両氏も同意見の様子。

「例えば、参加者が同じ条件のもとで腕を競えるように、ソーシャルゲームにもeスポーツモードなどを搭載すればいい」(筧氏)

 梅崎氏も「課金しなくても勝てるチャンスがあるようにすれば、より発展すると思う」と続けながらも、「課金をしない仕組みにするのは難しいのでは」と推測する。

「eスポーツほど、コンテンツの寿命を延ばすのに最適な競技シーンはありません。大会を定例化すればお客さんはやり込んでくれるし、課金もしてくれますから」

 さらに、日本のeスポーツ業界は、「人材不足が課題」とも。

「日本には、eスポーツのことを正しく理解している年長者が少ないのが実情です。リーダシップを発揮したり、健全な大会を企画・運営できる人材が海外と比べて少ないので、そういった人たちの育成にも力を入れるべきですね」

 課題は多いものの、急成長中の日本のeスポーツ業界が、“ブルーオーシャン”なのは事実。

「30、40代で大会に参加して優勝するのは難しいですがeスポーツバーを経営するなど、業界に投資するのはアリですね」(筧氏)

 世界が注目する日本のeスポーツ業界の動向に、注目してほしい。 <取材・文/週刊SPA!編集部>

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