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「俺と二人で旅がしたいの?」――46歳のバツイチおじさんは男前すぎるセリフを真顔で言い放った〈第27話〉

突然、嫁さんにフラれて独身になったTVディレクター。御年、46歳。英語もロクにしゃべれない彼が選んだ道は、新たな花嫁を探す世界一周旅行だった――。当サイトにて、2015年から約4年にわたり人気連載として大いに注目を集めた「英語力ゼロのバツいちおじさんが挑む世界一周花嫁探しの旅」がこの度、単行本化される。本連載では描き切れなかった結末まで、余すことなく一冊にまとめたという。その偉業を祝し、連載第1回目からの全文再配信を決定。第1回からプレイバックする!  *  *  * 46歳のバツイチおじさんによるノンフィクション巨編「世界一周花嫁探しの旅」、今回の滞在地は6か国目スリランカです。前回、国連で働く才女ギチと観光デートをし、「エラという村でごっつを待ってる」といい感じにつなげることができたバツイチおじさん。しかし、同じ部屋の二段ベッドでひと目惚れするほど超タイプなアジアン美女と出会ってしまい……。果たして、バツイチおじさんはギチが待つエラへと向かうのか? それともアジアン美女にアプローチするのか? 二股交際の可能性も匂わせ始めた欲張りおじさんのズンドコ珍道中、スタートです! 「この子を連れて帰るなら、俺たち全員分のお金をお前が払えよ」――46歳のバツイチおじさんはアラブの荒くれ者に難癖をつけられた英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」【第27話 白いスニーカーぶる~す】 スリランカの仏教の聖地キャンディのゲストハウスで出会った国連で働く才女ギチ。 観光デートの帰り際、「エラという村で待ってるから」と彼女から誘われた。 しかしその数時間後、ゲストハウスの2段ベッドの上に泊まるアジアン美女から「いいレストラン知ってたら連れてってくれませんか?」と初対面にもかかわらずお誘いを受ける。 「もしかして、モテてる?」 突然のモテ期到来に、俺は戸惑った。 なぜ同時に二人のマドンナが目の前に現れたのだろう。 俺は神を激しく恨んだ。 いや、でもそんなに恨まなくてもいいかもしれない。 俺は即座にそう思い直した。 たしかにこのアジアン美女は一目ぼれしそうになるほど俺のタイプだが、彼女と食事に行く程度で、二股にはならないだろう。 上と下で同じベッドを共有する仲である以上、この誘いを無下に断るのも男がすたるというもの。 結局、俺は自分が知っているレストランに彼女を連れて行くことにした。 美女「わー、素敵なレストラン」 俺「ここのスリランカ料理、結構美味しいっすよ。ビールが飲める店がこの街では2軒しかなくって、そのうちの一つなんです」 美女「へぇ、ありがとうございます」 彼女の名前はリー・フォンリー、香港に住む27歳の中国人女性だ。地元では専門商社に勤めていて、仕事を休んでスリランカを一周しているらしい。

香港の専門商社で働く27歳の中国人、リー。一目惚れしそうになるほど、超タイプ

俺「なんで一人旅してるの?」 リー「私、彼氏がいて、彼、バックパッカーするとすごくいい経験になるから、行ってきたらどう?って言われたんです」 えっ……。 そうなんだ……。 俺「やっぱり可愛い子には彼氏がいるよね。うん」 リー「そんなぁ。私、そんなに可愛くないですよ」 リーの口調はフレンドリーだけど、どことなく心の扉を堅く閉ざしてるように感じた。 リー「あの、もうブッタの歯を奉納してるお寺って行きました?」 俺「実は今日、行ってきたばかりなんだよね」 リー「どうでした?」 俺「すごく良かったよ」 リー「そうですか…もし行ってなかったら、明日一緒にどうかなぁ、って思ったんですけど…」 旅は自由だ。 同じ場所に2度行っても何の問題もない。 ギチと行ったばかりではあるが、むしろアテンドできるぐらいの知識はある。 ただ一つ、行けない理由があった。 俺「実は今、週に一回、ネットに日本語で記事を書いてて、明日までに書き上げないと間に合わないんだよ」 リー「……あ、……大丈夫です。私一人で行きます」 リーは顔を曇らせた。 そして、チキンヌードルの野菜だけを探し、フォークでお皿の脇に寄せた。 リー「小さい時、お母さんが無理やり野菜を食べさせたんで、私、野菜が食べれないんです」 リーからのお誘いを断ったのをきっかけに、彼女は完全に心の扉を閉ざした。 そして、その後の会話は全く盛り上がらなかった。 ご飯を食べ終わると2人で歩いてゲストハウスに戻った。 リー「おやすみなさい」 俺「おやすみ」 リーは2段ベッドの上で静かに寝息を立てた。 俺はその下のベッドに寝転びながらパソコンを叩き、朝までこの連載を書いた。 翌日、遅めに目が覚めた。 時刻はもう昼過ぎ。 2段ベッドの上を見てみると、布団のシーツは綺麗にたたまれていて、彼女の姿はもうなかった。 俺はベッドに再び寝転び、リーのことを考えた。 彼氏がいるとはいえ、観光ぐらい付き合ってあげてもよかったのかもしれない。 観光デートをすることで、堅く閉ざした彼女の心の扉を少しでも開けられたかもしれない。 でも、Wi-fi環境がいいこの宿で早く連載を仕上げないと、また書けなくなってしまう。 「世界一周花嫁探しの旅の連載を書くために花嫁候補を逃してしまうなんて本末転倒だよな」 俺は激しく後悔した。 気分転換にシャワーを浴び、ベッドに戻ると、2段ベッドの階段の下にリーの白くて小さいスニーカーがあった。 「あれ、帰って来た……のかな?」 改めて2段ベッドの上を確認したが、彼女の荷物はない。 「もしかして、忘れモノ?」

2段ベッドの階段の下に忘れ去られた白いスニーカー

俺はスニーカーの写真を撮り、中国人の間で流行っているSNS「We Chat」でメッセージを送った。
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もしかして、白いスニーカー忘れてない?
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