「この子を連れて帰るなら、俺たち全員分のお金をお前が払えよ」――46歳のバツイチおじさんはアラブの荒くれ者に難癖をつけられた〈第24話〉
突然、嫁さんにフラれて独身になったTVディレクター。御年、46歳。英語もロクにしゃべれない彼が選んだ道は、新たな花嫁を探す世界一周旅行だった――。当サイトにて、2015年から約4年にわたり人気連載として大いに注目を集めた「英語力ゼロのバツいちおじさんが挑む世界一周花嫁探しの旅」がこの度、単行本化される。本連載では描き切れなかった結末まで、余すことなく一冊にまとめたという。その偉業を祝し、連載第1回目からの全文再配信を決定。第1回からプレイバックする!
* * *
46歳のバツイチおじさんによるノンフィクション巨編「世界一周花嫁探しの旅」、今回の滞在地はタイ・バンコクです。前回、カンボジアのシェムリアップに実在した「テラスハウス」がまぶしすぎてまったく馴染めなかったバツイチおじさん。テラスハウスを離れ、以前、旅に疲れ果て“沈没生活”を送ることになったバンコクに再び戻ってきたのですが……。恋するバツイチおじさんのズンドコ珍道中、今回は久々にある出会いを果たします!
【第24話 恋する惑星】
カンボジア・シェムリアップのテラスハウスを去り、12ドルの格安のバンでタイのバンコクに向かった。二回目のバンコクだ。たった1300円ちょっとで国境を越えられるのだから安いものである。
これでタイ・ベトナム・カンボジアと東南アジアをぐるっと一周したことになる。
国境を越えバンコクの高層ビル街を見るとなんだか懐かしい感じがした。
バックパッカーの聖地カオサン通りでバスを降り、バーガーキングで腹を満たす。
そして、冬物を預けていたサトーンという下町にある一泊900円のゲストハウス「カーマバンコク」へ向かった。
世界一周するには真夏の国の服から真冬の国の服まで持って行く必要がある。冬物を詰め込んだ22キロのバックパックを背負い、バンコクから東南アジア一周に旅立つ直前、ゲストハウスのアメリカ人オーナーが、重い荷物でフラフラの俺を見かねて満面の笑みを浮かべてこう言ってくれた。
「冬物、重いだろうから預かるよ!」
異国の地で見知らぬ人に荷物の一部を預けるなんてかなり心配だったが、彼の笑顔を信用しお願いすることにした。
ところが、冬物の洋服を預けた直後に訪れたタイの北部はかなり寒かった。
寒さが体の芯までしみたが持っているのはTシャツや短パンなどの夏服のみ。
その時、薄れゆく意識の中で思い出したのが、オーナーの優しい満面の笑みだった。
「冬物、重いだろうから預かるよ!」
あの笑顔が頭にこびりついて離れなくなった。
なんでだろう。
なんで、「タイの北部はかなり寒いぞ!」とか言ってくれなかったのだろう。
バンコクでゲストハウスを経営してるなら、それぐらいは知ってるはずなのに。
その後も、Tシャツ一枚で寒くなると彼の笑顔を思い出し、恨みにも似た複雑な気持ちを抱いた。
そして、会ったら絶対にこう言ってやろうと心に決めていた。
「おかげで、寒かったよ!」
バンコクに戻り、ゲストハウス「カーマバンコク」に着いた。
すると、オーナーがあの優しい笑顔で迎えに来てくれた。
オーナー「おー、ゴトウ、よく戻ってきた!楽しかったかー??」
俺「…ただいま、楽しかったです」
オーナー「おーーそうか!良かった良かった」
俺「……」
オーナー「冬物、預かってるぞ! はははははははは!」
くそ……。
なんていい笑顔なんだ。
この屈託のない笑顔を見たら、もう「冬物なくて寒かった」なんてどうでも良くなってきた。
俺「……ははははは」
俺もつられて笑ってしまった。
俺「オーナー、預かってくれてありがとう!」
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1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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