「俺と二人で旅がしたいの?」――46歳のバツイチおじさんは男前すぎるセリフを真顔で言い放った〈第27話〉
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俺「大学生くん、ひとつお願いがあるんだけど」
日本人男子「何すか?」
俺「2人組の中国人が泊まってるでしょ。そのうちの小さいくて黒髪の女の子と2人で旅しようって話になったの」
日本人男子「はい」
俺「で、この後、そのこと切り出すから、さりげなくもう1人の女の子を誘い出してほしいんだよね」
日本人男子「え、でも、ごっつさんはかわいい子のほうと旅するんですよね? ずるくないっすか?」
俺「青年よ、君の人生はまだ長い。どうか、この哀れなおじさんのためにひと肌脱いでくれないか?」
日本人男子「ずるーーー。俺だってかわいい子と旅したいですもん」
俺「まぁまぁ。君はイケメンでかっこいい。チャンスはいくらでもあるよ」
日本人男子「……わかりました。このツケは高いですよ」
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翌朝、俺とリーはバックパックを背負い、2人で宿を出ようとしていた。
俺「ティンティン、またどこかで! 日本に来たら連絡してね」
リー「ティンティンまた! 中国で会いましょう」
ティンティンはにっこり笑った。そして――。
ティンティン「一晩よーく考えてんだけど。……私、よく考えたら、山登り苦手なの」
俺「……」
リー「……」
嫌な予感がした。
ティンティン「やっぱり、あなたたちについていく」
俺「え……?」
ティンティン「荷物パッキングするから30分ほど待ってて!」
ティンティンはそう言って部屋に戻った。
俺たちはあっけにとられた。
女の執念は怖い。
すると、リーが俺の手を引っ張り、こう言った。
リー「ごっつさん、逃げましょ。少し異常だわ」
俺「そ、そうだよな」
リー「駅まで走りましょう!」
俺「うん。走ろう!」
2人はバックパックを背負ったまま、走った。
22キロの荷物は重いがそんなことは言ってられない。
走りながら、気がつくと二人とも笑顔になっていた。
リー「なんか悪いことしてるみたいで、楽しいね」
俺「うん」
リー「なんか泥棒みたい」
これは愛の逃避行に違いない。
リーは白いスニーカーで、俺はボロボロのビーサンで
笑いながら走り続けた。
そして、ティンティンを無事に巻き、スリランカ鉄道に飛び乗った。
1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
2人を乗せたスリランカ鉄道は、エラを目指して走り始めた。
エラでは国連で働く才女ギチが待っている。
しかし、そんなことはどうでもいい。
それほど俺の恋心は燃え上がっていた。
花嫁探しには向いてないと思っていたスリランカで、
俺の恋の炎は激しく燃え盛り始めていた。
しかし次号、何度も引っ張って本当に申し訳ないが、「世界一周花嫁探しの旅」始まって以来の、旅の存続すら危ぶまれるほどの史上最大のメガトンピンチがついにほんとに間違いなく訪れる。そんな間近に迫りつつあるメガトンピンチの到来も、パッキングを終えて立ち尽くしたであろうティンティンの驚き顔も、愛の逃避行に舞い上がっていたこのときの俺は、まったく知るよしもないのだった――。
果たして俺の恋はうまくいくのか?
次号予告「マジでマジで訪れる! 愛の逃避行に舞い上がった46歳を待ち受けていた衝撃のメガトンピンチに一同唖然」を乞うご期待!
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