「俺と二人で旅がしたいの?」――46歳のバツイチおじさんは男前すぎるセリフを真顔で言い放った〈第27話〉
俺【もしかして、白いスニーカー忘れてない?】
リー【あ、忘れた(涙)】
俺【大丈夫?】
リー【……うん、次の街で新しいの買うから大丈夫(涙) 知らせてくれてありがとう(涙)】
俺は少し考えた。
リーの本当の気持ちは(涙)という絵文字に表れてるんじゃないか?
リーは俺に持ってきて欲しいと暗に言ってるんじゃないか?
いや、本当は俺に会いたいから(涙)マークを送ったんじゃないか?
普通送らないよな、(涙)マークなんて。
いや送るか。
絵文字にそんな意味なんてないのか。
でも……でも……。
突然、俺の内部に熱い感情が湧きあがってきた。
「素直になれよ、リー。俺が心の扉を開けてあげるよ」
脳内iTunesが作動し、近藤真彦の「スニーカーぶる~す」が流れ始めた。
♪ ペアでそろえたスニーカー 春夏秋と駆け抜け
離れ離れの冬が来る~
俺は We Chatでメッセージを送った。
脳内ではまだ「スニーカーぶる~す」が流れ続けている。
♪ 5分だけでもいいから 俺の話を聞いてよ
別れの電話取り~消せよ~
俺【今、どこにいるの?持っていくよ】
♪ ジグザグザグ ジグザグジグザグ 一人きり~
リー【え?大丈夫だよ。新しいの買うから」
♪ 青春の手前で うらぎりはないぜぇ~
俺【大丈夫。持っていく】
♪ ジグザグザグ ジグザグジグザグ 二人きり~
このままでぇ~ 背中から~ ずっと~ 抱いて~ いたい~
リー【ありがとう。今、ヌワイラって村に向かってるバスです。今日はパークビューゲストハウスに泊まります】
♪ Baby スニーカーぶる~す Baby この世界中 Baby 涙でびしょぬ~れ~
俺【じゃぁ、そこに持っていくよ】
♪ Baby スニーカーぶる~す Baby 俺たちはまだ
リー【本当にありがとう。そこで待ってる(笑顔)】
♪ Baby 青春知らずさぁぁぁあああ~~~ 黒柳さぁああーーーん!
俺は大至急荷物をパッキングし、白いスニーカーを小脇に抱え、ヌワエラ村行きの格安バスに飛び乗った。
その直後、リーからメッセージを着信した。
リー【あ、でも、コロンボで知り合った中国人のお友達も一緒です】
………そうなんだ(涙)。
でももう向かってるよ、リーーーさぁああーーーーん!
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