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「街の匂いもメシの味も何もかも合わない」――46歳のバツイチおじさんはスリランカに来たことを激しく後悔した〈第25話〉

突然、嫁さんにフラれて独身になったTVディレクター。御年、46歳。英語もロクにしゃべれない彼が選んだ道は、新たな花嫁を探す世界一周旅行だった――。当サイトにて、2015年から約4年にわたり人気連載として大いに注目を集めた「英語力ゼロのバツいちおじさんが挑む世界一周花嫁探しの旅」がこの度、単行本化される。本連載では描き切れなかった結末まで、余すことなく一冊にまとめたという。その偉業を祝し、連載第1回目からの全文再配信を決定。第1回からプレイバックする!  *  *  * 46歳のバツイチおじさんによるノンフィクション巨編「世界一周花嫁探しの旅」、長らく東南アジアをぐるぐる回ってましたが、今回はついに6か国目の地、スリランカに移動します。前回、二度目のバンコクでセレブな香港美女とデートするも、ハードボイルド小説のようなせつない別れを選んだバツイチおじさん。果たして新天地ではどんな出会いがあるのでしょうか。もはや恒例行事となりつつある「移動するたびにトラブルに巻き込まれる」も期待を裏切らない仕上がりです! 「この子を連れて帰るなら、俺たち全員分のお金をお前が払えよ」――46歳のバツイチおじさんはアラブの荒くれ者に難癖をつけられた英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」【第25話 スパイシーな出来事】 二回目のバンコクも4日が過ぎようとしていた。 朝、遅めに起き、洗濯をした後、ドミトリーのベッドに横たわりながらインドについて考えた。 この旅を始める決意をした時、インドには行きたいと思った。 インドには男のロマンを揺さぶる何かがある。 実はバンコクに戻ってきたのは、「インドのビザが取りやすい」と聞いていたからだ。 しかし、東南アジア一周で知り合った旅人情報によると、今はバンコクでインドビザを取れなくなってしまったらしい。 「インドへの旅はビザを取るところから始まっている」 別の旅人はそんなことを言っていた。 インドという国を旅するのは、何かと苦労するそうだ。 インド人は日本人とは違う価値観で生きているらしく、そのビザを取ること自体もかなり大変らしい。 俺は諦めずにリサーチを続けた。すると今、インドビザはスリランカかミャンマーのほうが比較的取りやすいということがわかった。 「スリランカってどんな国なんだろう? まったく知らないから、興味ある……」 俺はスリランカに行くことに決めた。そろそろ東南アジアを離れ、異文化に飛び込みたかった。 スリランカとはインドの南に位置する「紅茶とアーユルヴェーダ」が有名な、北海道の8割ほどの小さな島国だ。スリランカとは「光り輝く島」という意味で、自然、宗教、文化が混在することで、この国は光り輝くような魅力を放っているらしい。 「この見知らぬ異国で、自分の中の価値観をバラバラに崩壊させたい」 それがこの国を選んだ最大の理由だった。 スリランカ大使館が運営する英語オンラインサイトでETAと呼ばれる短期ビザを30$で取得し、航空チケットを買った。スリランカへ入国するには行きのチケットはもちろんのこと、出国先のチケットも事前に購入しなければならない。そこで、入国先はスリランカのコロンボ・バンダラナイケ国際空港、出国先は2週間後にすぐにインドに入れるように、インド・バラナシ空港行きのチケットを予約した。

バンコクのスワンナプーム国際空港

バンコクのスワンナプーム国際空港に到着すると、搭乗手続きするためカウンターに並んだ。列にいる人達を見ると、インド人っぽい人かアラブっぽい人がたくさんいる。どの人がスリランカ人かはまったくわからない。 空港職員「パスポートとチケットを拝見します」 俺「どうぞ」 空港職員「入国先はコロンボ空港、出国先はバーレーンでよろしいですね?」 俺「……ん?……バーレーン?」 空港職員「はい」 俺「インドのバラナシを予約したんですけど」 空港職員「……いや、バーレーンで予約されています」 俺「バーレーンってアラブの?」 空港職員「はい。アラブのバーレーンで予約されてます」 俺「バラナシではなく?」 空港職員「はい。バラナシではなく」 俺「バーレーンってあのバーレーン?」 空港職員「はい。あのバーレーン」 俺「……………」 やばい、間違った。 バラナシとバーレーンを間違えた。 つーか、「バ」しかあってねーし。 いや、それも違うわ。 VaranasiとBahrainって、一文字めから全然違うわ。 まったく似ても似つかぬ地名だったわ。 なんでだろう。 なんで入出国するたびにトラブルが起きるんだろう。 英語にはかなり慣れてきたとはいえ、やはり英語入力はまだまだ完璧ではないようだ。
チケット

どこからどう見ても「Bahrain(バーレーン)」と書いてある……

しかし、ここで立ち尽くしていてもらちが明かない。 仕方がないので、出国先をサウジアラビアの隣に位置する小国バーレーンにしたまま、搭乗手続きを終えた。 機内に入ると妙に香辛料くさい匂いが蔓延していた。 乗客は浅黒い顔で英語以外の言語を喋る人たちと民族衣装か宗教衣装を着た人たちしかいない。 日本人はもちろん俺だけ。俺は少し身構えた。ぶっちゃけ怖い。 4時間ほどフライトすると、スリランカのバンダラナイケ国際空港に到着した。

スリランカのコロンボ・バンダラナイケ国際空港

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なんとかスリランカに入国したが…
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