「俺と二人で旅がしたいの?」――46歳のバツイチおじさんは男前すぎるセリフを真顔で言い放った〈第27話〉
そして、なんとかワールズエンド(地の果て)と呼ばれる山頂まで着いた。
その頃にはクタクタからボロボロに変わっていた。割と限界に近い。
だが、リーの前では疲れた顔を見せたくない。
正確に言うと「クソじじい、使えねーなー」と思われたくない。
頂上に着くとリーとティンティンは撮影会を始めた。
若い中国人女性が写真にかける意気込みは、日本女性以上にスゴい。
2人は20分近く撮影をしていた。
俺はその間、体力を回復させるため地べたに座り、2人の様子を眺めていた。
すると、ティンティンが俺のところにやってきた。
ティンティン「ごっつさん、3人でジャンプしよう! 山頂で3人が宙に浮いている写真、きっと面白いよ」
この疲れた状態でジャンプはきつい。
だが、リーを見ると一緒に笑いながら手招きしている。
俺「やろう! 一発で成功させよう」
こうしてティンティン演出で3人で空中浮遊写真の撮影が始まった。ところが……。
ティンティン「良い写真が撮れてないわ! もう一回」
ティンティンの空中浮遊写真へのこだわりは鬼気迫るものがあった。
彼女は何度も撮り直しを命じた。
俺とリーはくたびれた身体で、20回近くジャンプをする羽目になった。
なんなんだろう、この病的なこだわりは……。
結局、写真は彼女の中で納得のいくものが撮れたらしい。ティンティンがOKを出した写真を見たら、彼女が俺とリーの倍の高さでジャンプしてる写真だった。
「なんだ、自分自身のポーズへのこだわりだったのか……」
下山したのは午後4時過ぎ。遅めの昼ご飯を取るとティンティンは「もう少し、紅茶ファクトリーを見たい!」と1人で観光に行ってしまった。相変わらず物凄いこだわりだ。
俺とリーは宿に戻った。この時間、宿には誰もいないようだ。
この日、初めて二人きりになった。
俺「この後の旅の予定は?」
リー「ごっつさんはどうするの?」
俺「明日にはエラって村に行こうかと思ってるんだよな」
リー「えー、エラ! 私も行こうと思ってたんだよ」
俺「本当!? じゃあ一緒に旅しようよ」
エラにはギチが待ってるはず。
でも、リーを誘わずにはいられなかった。
リー「……あ、でも、ティンティンとこのゲストハウスのお部屋、シェアしちゃってるから」
俺「そうか……しょうがないね」
リー「…でも、ごっつさんと一緒に行きたい」
俺「…………え?」
胸がドキッとした。
リー「ねぇ、どうすればいいと思う?」
俺「え? …………あの、俺と二人で旅がしたいの?」
リー「……うん」
リーは、恥ずかしそうに目をそらし、顔を赤らめた。
キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
俺 「大丈夫、俺がなんとかする」
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