生き様を見せた“浪速のドブネズミ”吹本賢児――デスマッチに命をかける漢たち vol.3

 人の生き様は不可視で、他人は皆、あたかも表面的に生きているかのように見える。この世で自分だけが複雑に、孤独に生きているかのように思える。しかし時には、他人の生き様を生々しいほどこの目に焼き付けたい。苦しいのは自分だけではないのだと安堵したい。だから、デスマッチを観に行く。血をだらだらと流して苦しみ、もがき、戦う人の生き様が見たいのだ。

吹本賢児

 吹本賢児というデスマッチファイターがいる。デスマッチ界の中心にいる選手ではない。“デスマッチのカリスマ”葛西純いわく、「上にいくには心が優しすぎる」選手だ。そんな吹本が、今年3月23日、FREEDOMS後楽園ホール大会のメインで、葛西純が持つKFC王座のベルトに挑戦した。「長いこと苦労して、ようやく葛西純の目の前に立てました」――。

 デスマッチが好きで、19歳のときプロレスラーになった。関西のインディ団体を経てアメリカへ渡ったが、帰国するとデスマッチをやる場所がなかった。2年間のブランクに突入し、「このまま辞めてしまうんじゃないかと思った」と当時を振り返る。そして2011年、“打倒・葛西純”を掲げ、上京した。しかし、メインの試合に出ることができない。結果を残せない焦りの中にいた吹本が、ようやく掴んだ葛西への挑戦権だった。大会のテーマは、「one’s own Life ~生き様~」。

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 葛西が吹本をカミソリボードに叩きつける。血まみれになった吹本は釣竿を取り出す。吹本の得意アイテムは“ルアー”。釣竿で葛西の口を釣り上げる。対する葛西は、ガラスボードに吹本を投げつけ、ガラスの破片で吹本の額をえぐる。リングを埋め尽くす白い破片が、蛍光灯なのかガラスなのか、もはや判別がつかない。そこで繰り広げられるラリアットの応酬。……吹本はもう、動けなくなっているではないか。それでも尚、葛西は喜々として“竹串”ボードを取り出す。勝者は葛西だった。

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