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地区優勝したレッドソックスの「髭マーケティング力」

 10月のポストシーズンを目前に、プレーオフ進出争いが大詰めを迎えているメジャーリーグ。最激戦区のアメリカン・リーグ東地区では現地時間20日、ボストン・レッドソックスが2007年以来の地区優勝を決め、リーグでプレーオフ進出一番乗りを果たした。  地区最下位に沈んだ昨シーズンの悪夢から僅か1年での、見事なカムバックだ。「「地球上最高のクローザー」上原旋風、米球界を席巻(https://nikkan-spa.jp/504621)」でも紹介した上原浩治、そして田沢純一という二人の日本人右腕も、地区優勝に大きく貢献した。  昨年は、ボビー・バレンタイン監督と選手たちの確執が取り沙汰されるなど、チームが内紛状態だったレッドソックス。しかし今季はジョン・ファレル新監督の下、一体感あるチームに生まれ変わった。  今年のレッドソックスがチーム一丸となっていることの象徴が、今チーム内で巻き起こっている「ヒゲフィーバー」だ。
MLB, レッドソックス, 上原浩治, 田沢純一

レッドソックスのチーム内では空前のヒゲブームが巻き起こっている

 レッドソックスといえば伝統的に、野性的で個性溢れる選手たちが集まる球団。かつてからワイルドなヒゲや長髪を生やした選手が多く在籍していた。「ヒゲ禁止」のライバル球団ニューヨーク・ヤンキースとは対照的だ。  今年のヒゲフィーバーのキッカケは、昨オフに新しくチームに加入したジョニー・ゴームスとマイク・ナポリの2選手が、スプリングトレーニングでヒゲを伸ばし始めたこと。二人は今や小鳥が飼えそうな程フサフサのあご髭を蓄えており、これにインスパイアされたチームメイトたちが追従し、皆ヒゲを生やし始めたのだ。 ◆ヒゲを生やしたファンはチケット1ドル?!
MLB, レッドソックス, 上原浩治, 田沢純一

お気に入りの選手のヒゲを選べる、ヒゲ一覧表。なかなかバリエーション豊かだ

 面白いのは、このヒゲフィーバーが選手間のブームに止まらず、球団フロントが目をつけてファンをも巻き込んだ一大ムーブメントにまで仕立てていることだ。  レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パーク場内にあるフェイスペインティングブースでは、お望みのヒゲをリクエストできる“ヒゲ一覧表”が登場。つけヒゲをつけたファンも続々来場し、試合のイニング間にはバックスクリーンでファンたちが自慢のヒゲを競っている。  ヒゲ祭りはどんどんエスカレートし、現地9月18日にはヒゲ(ナチュラルでも偽物でも可)をつけたファンにはチケットを1ドルで販売するという大奮発を敢行。球団の日本語公式ツイッター(https://twitter.com/redsoxjp)でも、#getbeardjp のハッシュタグをつけヒゲ写真を投稿すると、3名のベスト「ヒゲ」のファンに選手のサインボールなどがプレゼントされるというユニークなキャンペーンが実施された。
MLB, レッドソックス, 上原浩治, 田沢純一

ヒゲで顔を覆うファン。可愛らしい帽子とのギャップが何とも……

 ちなみに、ヤンキースが「ヒゲ禁止」の球団であることは先述した通りだが、こちらはこちらで「ハゲ」を活用したチャリティ活動を行っている(詳細はこちら→https://nikkan-spa.jp/379092)。ヒゲだろうとハゲだろうと上手く活用してマーケティングにもチャリティにもしてしまう、メジャーリーグ球団のそんな懐の広さと遊び心には脱帽だ。  レッドソックスが86年ぶりのワールドチャンピオンを果たした2004年、優等生とは程遠い個性的なメンバーを揃えたチームは“the idiots(愚か者)”と称された。今年は”the beard(ヒゲ)”でワールドチャンピオンまで駆け上がるだろうか? <取材・文/スポーツカルチャー研究所> http://www.facebook.com/SportsCultureLab 海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当
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