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「円安で輸出増&雇用増は通用しない」藤沢数希氏

’13年度の貿易収支は10兆円を超える赤字だった。これは原発停止に伴う燃料輸入の増加などが一因であるが、「円安になると輸出が増える」(貿易収支が改善する)という経済学の教科書が通用しなくなっている。その本当の理由を藤沢数希氏が解説する! ◆円安でも貿易赤字は過去最高、実質賃金が下がって失業率は低下。デフレ脱却で庶民は潤うのか? (人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏) 藤沢数希氏 アベノミクスによる異次元の量的緩和が始まる前の’12年11月のドル/円レートは79円ほどで、80円を切っていた。ユーロ/円は103円ほど。それが’14年5月にはドル/円は102円、ユーロ/円は141円である。ドルに対しては3割近く、ユーロに対しては4割近くも、円の価値が暴落したのだ。  円安政策は、自国通貨を安くするということで、日本人が持っている資産の価値を減らしてしまうが、輸出産業が多い日本では、輸出が増え景気がよくなるので、トータルで見ればプラスの効果が期待できると思われていた。しかし、これだけの円安が進んでも、輸出はそれほど増えずに、むしろ輸入が増え、貿易赤字が拡大し続けた。  原因の一つは、もちろん原発停止である。足りない電気を、老朽化した火力発電所などをフル稼働して凌いでいる。化石燃料の追加購入にかかる金額は、年間3兆~4兆円程度である。これはGDPの1%近い巨額な負担だ。しかし、それだけでは年間10兆円を超え、今も増え続けている貿易赤字を説明できない。  実は、日本はもはや円安になれば、企業の輸出が増えて、国内の雇用が増えるという国ではないのだ。多くの日本のメーカーがすでに生産拠点を海外に移転している。ベトナムやタイ、カンボジアの工場労働者の賃金は、日本の数分の1から10分の1以下である。円が3割程度安くなったところで、焼け石に水なのだ。逆に、アベノミクスで景気がよくなって、海外で生産された日本のメーカーの製品を日本人が買ったために、輸入金額が増えているのだ。 ⇒【後編】「アベノミクスは給料を合法的に目減りさせている」
https://nikkan-spa.jp/646072
【藤沢数希氏】 欧米の研究機関にて博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。ブログ「金融日記」は月間100万PV、ツイッターのフォロワーは8万人を超える。最新刊『外資系金融の終わり』が発売中
物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある
外資系金融の終わり

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