「アベノミクスは給料を合法的に目減りさせている」藤沢数希氏

’13年度の貿易収支は10兆円を超える赤字だった。これは原発停止に伴う燃料輸入の増加などが一因であるが、「円安になると輸出が増える」(貿易収支が改善する)という経済学の教科書が通用しなくなっている。その本当の理由を藤沢数希氏が解説する!

◆円安でも貿易赤字は過去最高、実質賃金が下がって失業率は低下。デフレ脱却で庶民は潤うのか?【後編】 (人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏)

⇒【前編】「円安で輸出増&雇用増は通用しない」はコチラ

 実際に、トヨタ自動車の’14年3月期決算では、営業利益が2兆2921億円となり過去最高益を更新したが、国内生産台数自体は増えていない。今年の3月に、社長の豊田章男氏が「(国内生産)300万台を守り抜きたいが『6重苦』であることは変わっておらず、今後どうなるかは予断を許さない」と発言した。自動車産業の6重苦とは、円高、高い法人税、自由貿易協定の遅れ、厳しい労働規制、環境規制、電力不安のことだ。

 しかし、アベノミクスによるデフレ脱却で、失業率が低下傾向にあるのも事実だろう。輸出産業だけでなく、国内景気が全般的に回復しているのが主な理由だが、ほかに2つの要因もある。労働者も普通のモノと一緒で、値段(給料)を下げればたくさん売れる。消費税増税、原発停止による電気代の上昇、円安による輸入品の値段の上昇などで、物価が上昇している。ところが、企業は労働者の給料を簡単には上げないので、額面の給料が同じでも、物価を考慮した実質的な給料が下がっている。また、日本は、少子高齢化により労働人口が減少し続けている。これら3つの要因が失業率を低下させた。

 デフレ脱却の一つの狙いは、労働者の給料を合法的に目減りさせることであり、こちらはうまくいっているようだ。

【今週の数字】
財務省が5月12日に発表した’13年度の貿易赤字額
10兆8642億円
2年連続で過去最高の赤字額を更新。サービス収支と海外から受け取る利子や配当などの所得収支を合わせた経常収支でも、7899億円の黒字に留まり、過去最低を記録

貿易収支と失業率

貿易収支と失業率の推移(季節調整済み)。原発停止分以上に輸入金額が増え、貿易赤字は過去最高額を更新し続けている。失業率は現在3.6%と低下傾向

【藤沢数希氏】
欧米の研究機関にて博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。ブログ「金融日記」は月間100万PV、ツイッターのフォロワーは8万人を超える。最新刊『外資系金融の終わり』が発売中

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