なぜインテリおじさんは若い女の才能を見出したがるのか?

『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは自らを饒舌に語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)などの著作で「性を商品化する」女性たちの内面を活写し注目されている文筆家の鈴木涼美が、「おじさん」をテーマに連載する「おじさんメモリアル」。記者時代のおじさん遍歴を語った「華のOL、さて誰と寝る?」の前編「めちゃモテOLは永遠に生理中」(http://nikkan-spa.jp/971465)に続く後編!

鈴木涼美のおじさんメモリアル【第9回 華のOL、さて誰と寝る? 後編・女スパイは針の筵】

 前回、私がちょっとOLっぽく社内恋愛の真似事などして得してみよっかな~みたいな行動をとったら案の定ろくでもない感じで終わったみたいな話をしたところ、多くのOLさん読者から社内でうっかり寝ちゃうなんて邪道ですね、とご指摘いただいた。うん、確かに。でも、これはまた多くのOLさんから同意をいただけそうな話なんですが、男って仕事している姿は4割増くらいに見えますよね?

 まず、スーツ着てて2割、後輩を指導してて1割、頭を下げて謝ってて1割、しめて4割。スーツ・マジックとはホスト業界なんかでもよく言われることで、まだホストと言えばスーツがデフォルトだった頃(ちなみに今は比較的カジュアルな私服が主流)は「店休日に遊びに行ったら私服ダサくてげんなり」なんてことはよく囁かれた。サラリーマンも同じことで、別にエディフィスやましてアルマーニのお高いお洒落スーツなんかじゃなくても、スーツカンパニーのストライプのスーツにけだるくネクタイなんて巻いて、いやぁ疲れたなんて言ってるといかにも企業戦士みたいな感じがして、女子たちの脳内には「知識と教養と名刺を武器に~組織ん中で頑張れサラリーマン♪」とミスチルあたりの曲が流れてかっこよく見えたりするんだけど、新聞社とかにはありがちな日曜出勤とかで私服ちっくな上司を見ると、ウケ狙いかと思うほどだっさいトックリとか着てて萎える。

 堪能できないんでござる。彼氏が美容師だったりホストだったり歯医者だったりして、客として職場見学に行くとその片鱗が見えてドキっとしたりするのだけど、でもまぁ客前で後輩を怒鳴りつけたりはなかなかしないだろうし、客前で取り引き先に土下座もないだろうからやっぱりそれなりに社内で浮ついてみるのはOLのたしなみだと思う。ちなみにですが、私の勤めていた会社含め、最近では多くの会社が家族見学デイみたいな、奥さんやお子さんを社内に招き入れ、職場の様子を見てもらうみたいな機会を設けているのだけど、あれは奥さんに旦那に惚れなおしてもらい、こんなにカッコいい旦那がこんなにカッコよく頑張っているのだから、どんなに残業させてもどんなに休日出勤させても怒らないでくれよな、という会社からのプレッシャーなのだと私は信じている。

 前置きが長くなったが、私のOL人生、社内でちょこっとつまみ食いした程度で終わったかというと意外とそうでもない。かといって、まあ営業系なら取り引き先とか、新聞社で言うと取材先とかって、直接的な利害がありすぎて、小心者の私や多くのOLは、そこまでくノ一然とはなかなかしていられない。どれくらい危険かというと、私がミニスカにブーツでとある取材先様と神楽坂あたりで食事に行ったところ、なぜかその取材先で私は「有望な人材を食い潰す魔女」というレッテルを貼られて、たちまち出入り禁止になったのでありました。

 というわけで私が、それなりに利益、それなりに安全、と思ってちょっとしたロマンスを求めたのが「同業他社」つまりは、同じ業種で担当が一緒だったりして時に同僚以上に顔を合わせるが、直接的な取り引きなどはなく、どちらかというとライバルに近い関係の殿方たちである。万が一チャラついた形跡がバレても「身体を張ってライバル社の動きをスパイしたんです!」とか言えるし、まあいいだろ的な。

 で、別にあちこち手をつけたワケじゃないけど、たまたま覚えているのが、とある省庁の記者クラブで何回か顔を合わせたことのある某社の記者I橋さんである。ちょっとオヤジだけどオヤジだけに安泰な家庭があり、数回デートしただけで結婚を迫ってくるような危険性はなかった。ということで数回デートしてみたんだけど、確かに記者会見寝坊したらすぐにテープ起こしくれたりするし、同業他社の女子たちからちょっとハブられても守ってくれたりするし、まぁそれなりの働きは見えてもハゲかけのレディオと一緒にいる時間はワタシにとっちゃあ苦痛だし、そもそも完全にキャバクラだったら客レベルのオジサンになんで無料で楽しい時間を提供してんのワタシ……たしかに19、20歳の頃よりは婆になったけれども、単価ちょい下がっても無料はないんじゃないの!?と正統派な疑問が脳内をよぎり、やや距離を置くようになった。

 時を同じくしてそのI橋さんやらと同じ持ち場だった省庁内でもまた、「鈴木さんていろんな取材先と寝てネタとってるんじゃないの」という、女としては名誉以外の何物でもない噂が駆け巡っており、ワタシはブスども黙れと思いながら一応心を痛めているふりをしていた。するとI橋さんは、「噂の元凶を仕留めてやる」と何やら無駄な正義感。続けざまに「俺はよ、お前の才能は真のものだと思ってるからよ」。なるほどI橋さんはいわゆる「俺はむき出しのナマ脚やわざとらしくチラ見えする胸の谷間なんかじゃなく、お前の中身を見てるんだよ」オジサンだったのである。

 このタイプ、私はどちらかというと苦手。だって女はオジサンなんかに自分の真の中身なんて見せないのだもの♪ ムチムチ脚やプリプリ谷間はオジサンのためにあるが、私のほんとの中身的なかわいさは愛するダーリンと大切な友達と愛しのママとパパ(リアル父親)のためにしかない。中身に惚れたと言われても、その中身って「今日は何時にダーリンと待ち合わせ❤」とか脳内で思いながら、なんとかそのウキウキ感をごまかそうと「この茶碗蒸しの器きゃわいい~ん」とか言ってるメンタルのことでしょ?

 で、まあ苦手だしウザいなとは思いつつ、でもまあ別に苦手でウザいものを排除していてはこの荒海みたいな汚い社会は泳げぬと思って適当に連絡を返していたら、ある日突如そのI橋さんからメールが届いた。「守ってやろうと思ってたのに、お前は◯田課長とも△山室長とも寝てたんだってな! 一生、国のお役人専用の娼婦かダッチワイフやっテロ」。

 最後の「やってろ」が「やっテロ」になっているのはその時緊迫していたシリア情勢にちなんだのか何なのかとかそんなところは突っ込みどころのその七くらいなのであって、まず◯田と△山って誰だよ知らないよ、変な噂から守ってくれるとか言ってそっちの根も葉もない噂のほうに流されっちゃってるじゃないの。この話は私とごく親しい身内の間でいとも簡単にミイラになったミイラ取りオジサンとして語り継がれたのである。当然、その「テロメール」は永遠に返信されることもなく。

永遠に返信されることのないテロメール

国際紛争も社内恋愛も、だいたい思いつめたほうの自爆テロで終わる

 私は世のオジサン方に言いたいのです。もしあなたが岩城滉一より不細工でホリエモンより貧乏ならば、無料でそのへんの仕事関係の女子なんかと寝て楽しもうなんて思わないほうがいい。歌舞伎町や吉原や、お安く行くなら池袋や鶯谷に行けば、秘密厳守の嬢たちが股を広げて待っており、癒やしてくれます故。無料でうっかり隣の席の女なんて抱いたら、その女子の身内たちの間で永遠に語り継がれちゃいますよ?

【鈴木涼美(すずき・すずみ)】
83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動。幻冬舎plusにて「愛と子宮が混乱中 夜のオネエサンの母娘論」(http://www.gentosha.jp/articles/-/3708)を連載中

撮影/福本邦洋 イラスト/ただりえこ

「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか

慶応大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修了。本書がデビュー作。

身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論

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