NBC特番“メインイベント”の怪――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第75回
アメリカの地上波ネットワークTVがプライムタイムにプロレス番組を全米生中継するのは1955年以来、じつに33年ぶりのことだった。
3大ネットワークのひとつ、NBCがプライムタイム特番“WWEメインイベント”をオンエアしたのは1988年2月5日(インディアナ州インディアナポリス、マーケット・スクウェア・アリーナ)。
NBCはこの3年まえの1985年からWWEの特番“サタデーナイト・メインイベント”を土曜の深夜ワクで不定期放映してきたが、午後9時からのプライムタイムで生中継番組をプロデュースするのはこれが初めての試みだった。
番組のメインイベントは、前年の“レッスルマニア3”の再戦となったハルク・ホーガン対アンドレ・ザ・ジャイアントのWWE世界ヘビー級選手権。アメリカの一般視聴者はこの試合をプロボクシングの世界タイトルマッチ中継と同じような感覚でとらえていたが、じつは番組内容そのものは約2カ月後に迫った“レッスルマニア4”の予告編=プロローグになっていた。
非常にディテールにこだわった推理小説のような短編ドラマの登場人物はホーガン、アンドレ、“ミリオンダラー・マン”テッド・デビアス、デビアスの執事バージル、そしてデビアスが用意したとされる“邪悪なレフェリー”アール・ヘブナーの5人。番組の実況・解説チームのビンス・マクマホンとジェシー・ベンチュラは“なにも知らないアナウンサー”を演じた。
タイトルマッチのオフィシャル・レフェリーはデーブ・ヘフナーだったが、試合途中からこのデーブ・ヘフナーとそっくりのもうひとりのレフェリーが出現し、アンドレがホーガンをフォールの体勢に入った瞬間、にせレフェリーのアール・ヘブナーがキャンバスを3回たたいて試合終了のゴングを要請。チャンピオンベルトをアンドレに手渡した。
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