NBC特番“メインイベント”の怪――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第75回
デーブとアールのヘブナー兄弟は――アールはレフェリーで、デーブはWWEフロントに勤務――一卵性双生児だから顔がうりふたつなのはあたりまえだが、実況・解説のビンスとベンチュラは「あれはいったいだれだ?」と驚きの声をあげ、視聴者を煙に巻いた。
衝撃的なドラマのストーリーラインは、億万長者のデビアスが“替え玉”を雇い、レフェリーのデーブ・ヘブナーとそっくりな顔に整形手術をほどこし、このタイトルマッチに潜入させたというものだった。
実在するアール・ヘブナーはそれから9年後に“ブレット・ハートのモントリオール事件”の当事者となる問題のレフェリーで、日本のWWEファンには“上級レフェリー(シニア・レフェリー)”として知られている人物だ。すいぶん昔からあやしい役回りを演じてきたことになる。
試合終了後、新チャンピオンとなったアンドレはその場でセコンドについていたデビアスにチャンピオンベルトの“売却”をアナウンス。にせレフェリーの出現、世界王座移動、そしてタイトルの譲渡というめまぐるしい展開のなかでNBCのプライムタイム特番はエンディングを迎えた。
この番組は全米でのべ1500万世帯が視聴し、15.2パーセントという驚異的な高視聴率をはじき出した。地上波、ケーブルTVを含むすべてのプロレス番組の視聴率歴代1位の記録となり、この数字は現在でも更新されていない。
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