業界別「爆買い終了」の真相
●百貨店:減少(一年前に比べて。以下同)
ワンフロアをすべて免税専門店に改装し、中国人観光客の取り込みに特に積極的だった銀座三越は、6月の総売上高の前年比増減率がマイナス11%と業界で最大の落ち込み。昨年7月に2300円台だった三越伊勢丹HD株価も最近は半値以下に低迷している。「『百貨店は田舎者の中国人が行く店』というイメージが都市部から来る富裕層観光客の間で広まり、敬遠されている」(上海市在住の日本人)のも一因だとか
●家電量販店:微減
総合免税店のキックバックシステムに辟易した中国人の来店が増加。新宿の家電量販店スタッフによると、男性には一眼レフカメラ、女性には美顔器の最新モデルが人気だとか。ただ、1回の来店で100万円以上を支払うような太客は、最近は見なくなったという。ちなみにヤマダ電機が昨年新橋にオープンした免税専門店は、わずか1年で閉店に追い込まれており、あくまで「日本人と同じ店で買いたい」と中国人は思っている
●骨董品:減少
爆買いブームとともに、辛亥革命時に亡命していた中国要人の書簡や文化大革命時に流出した美術品の買い戻しブームも起きた。昨年、都内で行われた展示即売会では、世界最古の印刷物ともされる中国・唐代の詩人・柳宗元の作品「唐柳先生文集」が1億9440万円で出品され、話題となった。しかし東京神保町にある古書店店主によると「価値のあるものの多くはすでに買われていったため、中国人の姿は見なくなった」とか
●ドラッグストア:増加
海外からの持ち込みについて中国側が課税を強化した影響で、転売ヤーによる紙オムツや粉ミルク、健康食品、化粧品などの買い占め行為は鳴りを潜めた。ただ、個人による小口買いはまだまだ堅調の様子。医薬品や健康食品における日本ブランドは絶対的で、円高による割高感も厭わないのだろう。経済産業省によると、5月のドラッグストアの売上高は4789億円となり、前年同期比で3.7%増となっている
●レストラン:変化なし
「新宿や池袋にある中国人ツアー客御用達のビュッフェ形式レストランは、旅の多様化や少人数型ツアーの台頭で、閑古鳥が鳴いている」(池袋在住の在日中国人)と言う。一方、これまでツアー客が利用しなかった個人経営の店や、深夜のバーなどにも中国人観光客の姿が目立ち始めた。日本の飲食店を中国語で予約できるネットサービスも登場している。またツアーの少人数化に伴い、居酒屋やダイニングの個室の需要が高まっている
●医療ツーリズム:微増
日本への人間ドックをはじめとする予防医療ツアーは、中国の富裕層を中心に市場が拡大しつつある。昨年、日本国内の医療機関の外国人患者の受け入れ数は、概算で5万~6万人とされている。一方で、「ガン患者などの難病者には日本の先進医療による治療を希望する人もいるが、受け入れ体制ができていない」(中国人ジャーナリストの周来友氏)という指摘もあり、大きなビジネスチャンスが潜んでいる。医療行為への爆買いは将来的に十分、起こりうるだろう
取材・文/奥窪優木
― [爆買い終了]の原因はぼったくりだった! ―