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「パソコンもカメラも買い直すしかない」――46歳のバツイチおじさんはインドのシリコンバレーを目指した〈第29話〉

その晩、トリップアドバイザーの写真から、おそらくゲイカップルがやってるであろうゲストハウスに泊まることにした。ゲイなら宿は細やかな気配りでいっぱいだろうという計算だ。 予想どおり彼らのホスピタリティーは完璧で、部屋に入ると少し冷静さを取り戻した。 「あ、保険がある!」 旅する前に「世界一周保険」をかけていたことを思い出した。 急いで損保ジャパンに電話をし、やれる手続きを全てやった。 少しホッとしてベッドに寝転がった。 もはやこの旅の習性なのか、この顛末を連載用にメモしようと思った。 そして、改めて絶望した。 「やべぇ。連載を書くパソコンがないんだった……」 パソコンやカメラはこの旅唯一の仕事道具。 ないとやばい。 書けない。 さらに、明日にはインドだ。 これはもう、インドで買い直すしかない。 ……それにしても、インドでパソコンなんてホントに買えるのか? つーか、インドで知ってることといえば「スラムドッグ$ミリオネア」のストリートチルドレンくらい。 もしくは「踊るマハラジャ」のように突然インドダンスを踊りだす、くらいだ。 そんな国で、一介の日本人がパソコンやカメラなんて買えるのか? 細やかなホスピタリティーでおなじみのゲイカップルに、藁にもすがる思いで聞いてみた。 俺「インドでMacBook Air買えるとこ知ってます? 今日盗まれちゃって……。仕事に必要なんです」 ゲイ①「え!それは大変ね。ちょっと待って。調べるわ」 ゲイカップルは同じ機種のMacBook Airを使って調べてくれていた。 ゲイ①「ムンバイなら買えるかな」 ゲイ②「何言ってんの! バンガロールのほうがいいわよ!」 ゲイ①「違うわ! ムンバイよ!」 ゲイ②「バンガロールよバカ!」 ゲイ①「キーー!」 2人は瞬く間に喧嘩を始めた。で、結局――。 ゲイ①「私たちはバンガロールをオススメするわ」 ゲイ②「バンガロールはインドのシリコンバレーと呼ばれていてApple Storeもあるみたいよ」 俺「インドのシリコンバレーって聞いたことあります。そうなんだ、バンガロールって名前なんだ」 俺はMacBook Airを借り、チケットを手配した。 事前に予約していたバラナシ行きのチケットが無料でバンガロール行きに変更できたので、行き先を変えた。背に腹は代えられない。 「よし! 世界一周花嫁探しの旅を続けるぞ!」

コロンボ国際空港のインド行きカウンター

翌日、一ヶ月後に出国するためにネパール・カトマンズの出国用チケットを買い、インド・バンガロールを目指した。 果たして、インドはどんなところなのか? インド人は突然ダンスを踊りだすのか? 旅立つ前から気になって気になってしょうがなかった魅惑のインド旅がいよいよ始まる。 インド・バンガロール空港、緊張の入国審査。 いつも「移動するたびに即トラブル」が、今回も起きそうだ。 いや、すでにもう起きてる。 メガトンピンチの真っ只中にいる。 このうえ、また空港でさらなるトラブルに巻き込まれたら……。 インド人っぽい顔の中年の大柄な男が、厳しい目で俺を審査した。 審査官「オケー」 特に問題もなく、拍子抜けするほどあっさりと、憧れのインドに到着した。 「え? 意外と都会……」 まったく想像がつかなかったバンガロール。空港や街並みは、他のアジアの首都と同じくらい洗練されていた。さすがインドのシリコンバレーだ。

意外と近代的なバンガロール空港

いつものように、空港でスマホのSIMカードを買うことにした。 空港職員「ここにはSIMカード売ってないよ。街に行きなさい」 俺「え? そんなわけないでしょ。いくらですか? 売ってくださいよ」 空港職員「いや、本当にないんだよ」 これまで旅したすべての国で買えたSIMカードが、なぜか空港で買えない。 さすが、さすがはインド。一筋縄では行かなそうだ。 仕方がないので、盗まれなかったほうのスマホで地図を出し、事前に予約した宿に向かった。
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飲み屋に向かうも、あまり歓迎されているムードではない…
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