「勇気を振り絞れ俺! ここしかないぞ俺!」――46歳のバツイチおじさんは満天の星空の下で勝負に出ようとした〈第28話〉
突然、嫁さんにフラれて独身になったTVディレクター。御年、46歳。英語もロクにしゃべれない彼が選んだ道は、新たな花嫁を探す世界一周旅行だった――。当サイトにて、2015年から約4年にわたり人気連載として大いに注目を集めた「英語力ゼロのバツいちおじさんが挑む世界一周花嫁探しの旅」がこの度、単行本化される。本連載では描き切れなかった結末まで、余すことなく一冊にまとめたという。その偉業を祝し、連載第1回目からの全文再配信を決定。第1回からプレイバックする!
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46歳のバツイチおじさんによるノンフィクション巨編「世界一周花嫁探しの旅」、今回の滞在地は6か国目スリランカです。前回、美人中国人リーとの恋物語がついに動き始めたバツイチおじさん。2人は手を取り合い、2人だけの愛の逃避行を決行したのでした。果たして2人の恋の行方は? そして、何回にもわたって引っ張りまくった「連載の存続すら危ぶまれるほどのメガトンピンチ」の全貌とは? 今回、そのすべてが判明します!
【第28話 46歳の小学生】
美人中国人のリーが置き忘れた白いスニーカー。遠く離れたヌワラ・エリヤまでリーの忘れ物を届けたことで、彼女はにわかに心を開き始めた。リーは共に旅をしてきたティンティンと離れ、俺と2人で旅することを望んだ。しかし、ティンティンの説得を試みても、まったく納得してくれない。するとリーは俺の手を取りこう言った。
「ごっつさん、逃げましょ」
2人は重いバックパックを背負い駅まで走った。
そして、エッラ村へと向かうスリランカ鉄道に飛び乗った。
エッラ村には、かつてデートをした国連で働くノルウェー人のギチがいる。
もしかしたら鉢合わせになるかも?
しかし、そんなことはどうでもいい。
そのくらい俺の恋の炎は燃え上がっていた。
スリランカ鉄道に飛び乗ると、リーはハーハーと息を切らしながら俺を見て笑った。
リー「こんなにドキドキしたの初めてかも」
2人は4人掛けの席に隣り合わせに座った。
荷物を上棚に乗せると、リーは俺を見て手招きをした。
リー「特等席があるの。一緒に座らない?」
俺「え? ここ一番安い席だよ」
リー「ふふふ。中国の友達がメッセージで送ってきたの。いい席よ」
そう言うとニコニコしながら連結口近くにある「出入り口車両」に俺を連れて行った。
リー「ここから足を列車の外に投げ出して座ると、超最高の気分になれるみたい」
俺「マジ? 怖いよ~。足が壁とかにぶつからないかな?」
リー「大丈夫よ」
そう言うと、リーは出入り口に腰を下ろし、足を外に投げ出した。
リー「わー! 最高! ごっつさんも」
俺も恐る恐る彼女の横に座り足を外に投げ出した。
たしかに、楽しい。
まるで少年時代に、親に内緒で悪いことをしているような気分になった。
2人は特等席から横並びに足を外に投げ出し、スリランカの田舎道を進んだ。窓の外には紅茶畑が一面に広がっている。
ふとリーのほうを見ると、彼女の綺麗な黒髪が風になびいた。俺は心が震えた。
「……かわいい」
エッラに到着すると、2人で宿を探すことになった。俺がトリップアドバイザーで予約しようとすると、リーがそれを制する。
リー「その宿、現地で金額交渉しましょう。そっちのほうが安くなるから」
さすが中国女性、しっかりしている。
エッラは小さな村ではあるが、お洒落なカフェやレストランがたくさんあった。周りは紅茶畑の緑に囲まれていて、空気がとても澄んでいる。観光客のほとんどが白人だ。おそらくヨーロッパ人の避暑地として発展してきた村なのだろう。
2人は山の上にある小さなゲストハウスを見つけた。リーと2人で泊まる宿だ。
「もしかして同じ部屋に泊まるの??」
リーはいつもは慎重な性格だが、たまに大胆な行動をとることがある。
「もしかして・・・」
俺の胸は密かに高鳴った。
リー「すみません、オーナーさんですか? あの、2人で泊まりたいんですけど、おいくらですか?」
2人で泊まりたいって……。
大胆でいやらしい響きだ。
オーナー「2人で泊まるの?」
俺「はい、2人です」
オーナー「一緒の部屋? そのほうが安くできるけど」
俺「………」
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