「パソコンもカメラも買い直すしかない」――46歳のバツイチおじさんはインドのシリコンバレーを目指した〈第29話〉
翌日、MacBook Airとカメラ、SIMカードの買い出しに向かった。
「パソコンとカメラは絶対に必要だ。でも、ほんとに揃うのかな……」
目的地のApple Storeはショッピングモールの中にあった。この辺りは、マイクロソフトやヒューレットパッカード、ソニーなどのIT分野の国際企業がたくさん集結していた。インドのシリコンバレーという話はどうやら本当のようだ。
ここで、連載に必要最低限のMacBook Airとカメラとリュックサックを総額14万5300円で買い揃えることができた。
品数もそれなりに豊富で、さすがは大国・インドのシリコンバレーだ。
MacBook Airはこの旅の一番の生命線なので、最新のものを購入。日本円にすると13万円弱で、日本で買った時より高かった。カメラは型落ち品をリーズナブルに購入した。
正直、ほんとに買い直せるのかかなり不安だったが、案外、拍子抜けするほど簡単に買えることができた。
とにかく、連載存続の危機はこれで回避できる。
だが、スマホのSIMカードはなかなか買えず、これがかなり手こずりまくった。
書類を完璧にして、またここに戻るよう言われる。
書類審査はビザと同様とても厳しく、細かい書類のミスで何度も時間をロスした。
3日目に、ローカルな友達のサインと確認の電話が必要だと言われた。
「えっ、ローカルな友達?」
インドに友達なんかいるわけもなく、ホテルの従業員にお願いしてなんとか書類を完成させた。
結局、SIMカードをゲットするのに5日間かかってしまった。
これで、バンガロールでの用事はすべて終わった。
バンガロールはインドの南部中央に位置している。何かの縁で予定になかった南インドに来たのだから、折角なのでインド最南端のカニャクマリを目指すことにした。
翌朝、駅に向かい鉄道の一番安い席を買い、隣町マイソールを目指した。列車の中は物売りが多くて、サモサなどの軽食を売りに来るローカルなおじさんの他に、身障者やゲイなどの物乞いも現れて、なかなか騒々しくて楽しい雰囲気だった。
夕方にはマイソールに到着し、リキシャで宿に向かう。マイソールは南インドで2番目にでかい都市で、かつてのマイソール王国の首都。ヒンドゥー教やイスラム教などさまざまな宗教が共存している宗教的都市でもある。そのせいか、街並みはどこか古都の雰囲気を漂わせ、独特の荘厳さがあった。
宿に到着し、街を散歩していると50歳くらいの怪しいおっさんが日本語で声をかけてきた。
おっさん「ヤクザ、たこ焼き。ヤクザ、たこ焼き」
俺「ははは」
おっさん「日本人? 私、ヤクザとたこ焼き知ってるよ」
俺「なんで日本語しゃべれるの?」
おっさん「私、ヤクザ。Do you understand?」
どうやらこのおっさん、ヤクザとたこ焼きという日本語がお気に入りらしい。
【以下、英語の会話】
おっさん「俺、ゴアで漁師をやっていて、今、シーズンオフだから帰って来てるんだ」
俺「地元?」
おっさん「ここは俺の生まれ育った町だよ。ヤクザボーイはヨガやる?」
俺「ヤクザボーイ? あ、俺のことね。少し日本でやったことがあるくらいかな」
おっさん「俺、アシュタンガヨガの先生だよ。教えようか?」
俺「今日はイイよ。疲れたし」
おっさん「晩メシ食べた?」
俺「まだだよ」
おっさん「一緒に食べない?」
俺「イイね~。たこ焼き食える?」
おっさん「ははは」
ということで、一緒に晩ご飯を食べに行くことになった。
1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
記事一覧へ
記事一覧へ
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ