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「パソコンもカメラも買い直すしかない」――46歳のバツイチおじさんはインドのシリコンバレーを目指した〈第29話〉

翌朝11時、ゲストハウスの入り口でおっさんを待った。 メガトンピンチからなんとか立ち直り、「世界一周花嫁さがしの旅」を再開することができたのに、まさか一発目でおっさんとデートすることになるとは……。 しかし、当のおっさんはなかなか来ない。 外に出て待っていると、おっさんらしき人が100m先で俺を見ている。 そこからこちらに全然近づいて来ない。 いや、なんでだよ。 どんな一風変わった待ち合わせスタイルなんだよ。 「スゲーーー怪しい」 俺はフロントに行き、ゲストハウスのオーナーに昨晩一緒に撮った写真を見せて、おっさんのことについて聞いてみた。 俺「このおっさん知ってます? 昨日一緒に飲んだんですけど」 オーナー「あーー彼ね。知ってるよ」 俺「ゴア出身の漁師で今、アシュタンガヨガの先生をやってるって言ってましたけど」 オーナー「え? ははははは。違うよ。彼はこの辺の観光客を相手にしている個人観光案内だよ」 俺「あ、なるほど。うん、そうか。合点がいきました」 オーナー「観光客をカモにしてるんだよ」 俺「いい人ですか? 悪い人ですか?」 オーナー「それは俺の口から言えないな。同じインド人の仲間だし」 俺「そうですよね。じゃぁ1日遊んできます!」 その時、オーナーが気になる一言を言った。 オーナー「Take care!(気をつけろよ)」 それからおっさんと遊んでも、この言葉が頭から離れなくなった。 まずはおっさんがたまに働いてるというマザーテレサのアシュラム(ヨガ道場)に行った。 が、しかし、アシュラムの人はおっさんを初めて会った人として扱った。 どうやらアシュラムで働いてるというのは嘘らしい。 おっさん、嘘をつくなら、もう少しうまくつけよな。 おっさん「お前、ボブマリー好きか?」 俺「うん、好きだよ」 すると、おっさんが街中で突然歌い出した。 ハッピーなおっさんなんだな。ははは。 おっさん「♪~One love,one heart Let’s get together and fell all right  (一つの愛、一つの心、さあ皆いっしょに集まろう、そして大丈夫だと感じるんだ)」 俺「あ、それいいね」 おっさん「一緒に歌おうぜ!」 恥ずかしいけど楽しそうだから歌ってみた。 「♪~One love,one heart Let’s get together and fell all right  (一つの愛、一つの心、さあ皆いっしょに集まろう、そして大丈夫だと感じるんだ)」 このおっさん、俺の警戒心を取り去るためにこの歌を選んだんだったらたいしたもんだ。 ものすごく悪い人か、ものすごく良い人かもしれない。 どちらにせよ面白そうなおっさんだ。 それから、おっさんオススメのレストランに行って、昼ごはんを一緒に食べた。 おっさんはうまそうにカレーを右手で食べ、丁寧に右手の使い方を教えてくれた。 おっさん「なぁ、お前ガンジャやるのか?」 ガンジャとはマリファナのことである。 俺「いや、やったことがない」 おっさん「やろうぜ」 俺「いや、やらない主義なんだ」 おっさん「やれよ。インドでは皆、普通にやってるぞ。友情の証しだ」 俺「いや、ごめん。やらない」 マリファナを勧めてくるなんてこのおっさん、やっぱり悪い人なのか?

ガンジャ(マリファナ)を勧める怪しいおっさん

思い切っておっさんに質問してみた。 俺「あんた、観光客狙いの個人観光案内でしょ? 俺、宿の人に聞いたよ」 おっさん「……違う。俺はお前の友達だよ」 俺「俺にそこまでしてくれる動機がわからないんだよね」 おっさん「いや、友情の証しだよ」 俺「ガンジャ、勧めてきたじゃん」 おっさん「インドでガンジャを一緒に吸うのは本当に友情の証しなんだよ。ついて来い!」 そう言うとおっさんは、塀を乗り越え原っぱに俺を連れて行った。 そして、急に立ち止まると、いきなり立ちションを始めた。 いや、どんだけ唐突な連れションなんだよ、おっさん……。

突如、ションベンに行く怪しいおっさん

「おっさん、自由すぎるぜ」 すると、20代とおぼしき若者4人が横を通りすぎた。 おっさん「やぁ!」 若者①「こんにちは、ガンジャマン!」 えっ!? ガンジャマン? 俺は耳を疑った。
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どうやらこのおっさん…
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