「今夜、君に恋に落ちてしまいそうだぜ」――46歳のバツイチおじさんはクサすぎるセリフをさらりと口走った〈第32話〉
俺「……おとり?」
ケリー「うん。ここに降りるって偽の情報を流して、本当は別の場所に到着してるのよ」
俺「うーん。さすがに厳重だね」
後日のニュースを見ると、モディ首相は空路で現地に向かっていると発表するとともに、死亡者の遺族に20万ルピー(約32万円)、負傷者の家族に5万ルピー(約8万円)を支払うと発表した。だが、モディ首相が南インドの事故現場に来たかどうかは、結局わからずじまいだった。
ケリー「しょうがないね。それより、暑すぎない?」
俺「暑い。今日、40度近くあるんじゃないかな」
ケリー「今から海で泳がない?」
俺「…いいけど、水着取りに宿に戻らないと」
ケリー「大丈夫よ」
そう言うとケリーは崖を下り、ビーチのほうへ向かった。
俺は訳のわからぬまま彼女について行った。
時刻は夕方の5時くらい。
そろそろ日が陰り始め、空は少しだけ赤みがかってきていた。
それにしても水着も持たずに海で泳ぐってどういうことなんだ?
まさか、下着で泳ぐってこと?
それはそれで嬉しいけど……。
ま、たぶん、波打ち際で水をジャブジャブ掛け合うんだろうな。80年代アイドルみたいに。
ケリー「ごっつ、私の荷物見ててもらっていい?」
俺「いいよ」
ケリー「サンキュー!」
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ