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「今夜、君に恋に落ちてしまいそうだぜ」――46歳のバツイチおじさんはクサすぎるセリフをさらりと口走った〈第32話〉

二人は海沿いの雰囲気の良いシーフードレストランに入った。 俺たちは入り口で釣ったばかりの魚を選んだ。それをその場で調理してくれる。 ネットの情報だと、ベジタリアンの多いインドでシーフード料理をやってるお店は少ないが、魚介類が豊富に摂れるここ南インド・バルカラビーチのシーフードは最高にうまいと書いてある。俺は獲れたての魚で作るシーフードスパゲッティを注文した。 俺「このテラス席、良いね。星もよく見えるし、波の音も聞こえる」 ケリー「うん。ロマンチックね」 あれ? なんかトントン拍子にうまくいってる。 なんだこの流れは? ケリー「これまで旅をしてきて、花嫁候補は見つかったの?」 俺「聞きたい?」 ケリー「うん。すごく興味がある」 俺「ちょっと長くて悲しいお話になるけどいい?」 ケリー「うん」 俺「じゃあ、ハンカチを用意してね。まず、フィリピンのセブ島で日本人の女の子に恋をし、フラれ、英語学校で若い韓国人女性に恋に落ちたんだけどクリスマスイブにフラれ、タイのバンコクで運命的に元カノにあったんだけど、彼女には素敵な旦那さんがいることを知り、フラれ、タイのチェンマイで出会ったとても可愛い日本人女性と一緒にカンボジアのホーチミンに行ったんだけど、ホーチミンで放置され、フラれ、カンボジアで出会った飲み屋のかっこいい女の子に恋して、フラれ、スリランカで好みのタイプの中国人に恋に落ちたんだけど、中国に彼氏がいるからとフラれ。旅してトータル6回フラれて、今、君の目の前に元気な姿でニヤニヤしながら座ってるよ」 ケリーはケラケラと笑った。 ケリー「ごっつ~、面白すぎる~!」 なんとか英語で笑いを取ることができた。 つかみはオッケー。 ここからが俺の得意技、あえての「クサいセリフ」だ。 俺「そして、今夜、君に恋に落ちてしまいそうだぜ」
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ケリーの目の色が一瞬変わった
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