ライフ

「今夜、君に恋に落ちてしまいそうだぜ」――46歳のバツイチおじさんはクサすぎるセリフをさらりと口走った〈第32話〉

気づくと時刻は10時を回っていた。 ケリー「私、眠くなっちゃった」 俺「そうだね。昼間も暑かったしね」 ケリー「明日は何してるの?」 俺「特に予定はないけど」 ケリー「じゃあ、適当に連絡ちょうだい。私も暇だから」 そう言ってその夜は散会となった。 帰り道、ラオウの、いや、ケリーのことを考えた。 ケリーのマシンガントークが、東京で仕事をしている時の自分自身にかぶってしょうがなかった。 「俺もスイッチが入ると、相手のことも考えず、早口でしゃべり続けちゃうんだよな」 それでも宿に着くまで何度も何度もピーターパイパーの早口言葉を口ずさみながら帰った。 「Peter Piper pickeda peck of pickled peppers……」 やがて、ピーターパイパーは波の音と混じって打ち消された。 翌朝、ゆっくり起きて洗濯をした。 時間はたっぷりあるのに、なぜかケリーに連絡する気が起きない。 なぜだろう。 しかし、その答えは、意外とあっさりすぐに出た。 「ケリーといると、仕事のこと考えちゃうんだよな……」 俺は旅人。 俺は花嫁探し中。 今は、仕事モードになりたくない。 ラオウとはなるべく距離をおいていたい。 夕方になり、涼しくなるのを見計らって、俺は一人でビーチを散歩した。 一人で浜辺に座り、夕日を見る。 そして暗くなるまでボーっとした。

バルカラビーチの夕焼け

ふと、別れた嫁の言葉が頭によぎった。 元嫁「ねぇ、仕事の話やめてよ。面白くないよ」 俺「え? なんで? 結構興味深い話してると思うんだけどな」 元嫁「……あなた、何にもわかってないね」 そうか、そうだよな。 そう気づくと、胸が締め付けられるような苦い思いが蘇った。 「忘れよう」
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俺は無理やり脳みそを強制終了した
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