エースと仲間たちのホーム・アウェー・フロム・ホーム Home away from home――フミ斎藤のプロレス読本#042【全日本ガイジン編エピソード11】
2、3週間のオフが終ると、エースはまたスーツケースの中身を整理して旅に出る。タンパにはタンパの生活があるように、トーキョーにはトーキョーの生活がある。
仕事とプライベートを完全に分けてもらったほうが、ジル夫人としても安心できるらしい。ジョニー・エースがアメリカで試合をするようになったら、1日24時間、1年に365日、プロレスラーのワイフを演じなければならない。ふたりにはいまの状態がいちばん心地よい。
ロードに出ているあいだ――日本にいるあいだの日常――は、四角くてちいさくて天井の低いホテルのシングルルームだ。やっぱり、みんながなんとなくゴロゴロできる居間が必要だから、エースの部屋がいつもボーイズのラウンジになる。
ドアを開けっぱなしにしておくと、5分ごとにだれかが入ってきてはひとしきりおしゃべりをして、また出ていく。
お酒もタバコもやらないし、外にも遊びにいかないダグ・ファーナスは、エースの部屋に来てもひとりでおとなしく本を読んだりしている。悪ガキ系のダニー・クロファットは、土足のままベッドの上に乗っかって、みんなに笑いばなしを聞かせてくれたりする。
ちょうどいいころあいを見はからって、エースがボーイズを食事に誘いだす。
ファーナスはボディービルダー式の食事メニューをきっちりと守っていて、シリーズ興行の日数分のツナの缶詰め、ナッツ類、オートミール、プロテイン・バーなどをアメリカから持ってくる。もちろん、ジャンクフードはいっさい食べない。
その日のエースとクロファットのディナーは、ホテルの近くのラーメン屋でチャーハンと餃子とビール。食事のあとは、コンビニに寄ってファーナスから頼まれたミネラルウォーターとプレーン・ヨーグルトを買った。(つづく)
※文中敬称略
※この連載は月~金で毎日更新されます
文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

斎藤文彦
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
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