芸人「銀シャリ」の鰻 「重子ってコにフラれた」
―[[珍名&同姓同名]さんの悲喜劇]―
珍名で嫌なことはあっても、いいことは全然ないという鰻さん。
「車の免許更新で最後名前呼ばれるでしょ。そのとき、『マムシ』とか『サカナ』とか呼ばれました。さすがに『サカナ』は適当すぎるやろって。あと、我が家には鰻を食べてはダメという言い伝えがあって、以前兄が『迷信や』ってうなぎパイを食うたら、すごい下痢になってもうて救急車で運ばれたこともありましたね。その話をテレビでして以来、弁当屋のおばちゃんやらが、『鰻は入ってないから安心して』とドヤ顔で言うてきて、愛想笑いを浮かべる日々です」
だが、珍名に翻弄されるうちに面倒くさい事態の回避法も開発。
「出前の注文の電話相手は、鰻なんて名字が存在するっていう発想がないから、必ず『フナキさん?』とか聞き直してくるんです。それで対処法考えてたら、昔、親がファミレスの順番待ちの名簿に、縁もゆかりもない『中西』って名前書いてたの思い出して……。僕も今は平凡な偽名を使ってます(笑)」
子供の頃も名前のせいでさんざんな目に遭ったという。
「始業式の後に教室を覗きにくるヤツが必ずおって、僕の顔を見て『普通やな』『……ぽいな』とか呟いて帰る。完全に鰻顔かどうか確認しにきてるだけなんです。ウナギイヌってアダ名になったこともありましたわ。タウンページ見て家にイタ電してきよるヤツもいて、『はい、鰻です』って出ると、笑い声がしてガチャン。多いときは一日10回もあったんで、タウンページから名前消してもらいました」
珍名は恋愛にも悲劇をもたらす。
「重子ってコに告白したら、将来“鰻重”子になるのは嫌だとフラれたことがあったんです。もう婿養子に行こかなって本気で思うてましたね。せやから、『二階堂』とか『綾小路』とかカッコいい名字に変わることばっかり考えてましたわ。でも、今は数少ない鰻姓を残さなあかん!という義務感がある。嫁になる人には鰻姓を受け入れてもろて、いっぱい子供を産んでもらおうと思ってます(笑)」
【鰻 和弘さん】
お笑いコンビ「銀シャリ」のボケ担当。大阪府八尾市出身。得意のしゃべくり漫才で「Mー1グランプリ2010」の決勝に進出、活躍の場を広げている
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