「ヘイト本」はどうして生まれたのか? 嫌韓中本の異例のヒットから考える
かくも攻撃的なヘイト言論の根はどこにあるのか。右派論壇誌が新聞広告で使う文言の変遷を研究している能川元一氏に聞いた。
「伝統的に日本の右派は、反共の同盟意識から親韓であり、一方的なヘイトはしませんでした。『諸君!』の’95年5月号の読売新聞広告では、韓国を蔑視する右派文化人への批判記事が強調されています。昨今の広告のように韓国の非ばかりを一方的に意識させる文言ではない点が大きく違います」
この状況が変わった大きな転換点は、’96年に慰安婦問題が中学校の全教科書に載ると明らかになったことだと能川氏は指摘する。
「危機感を持った右派は’97年に『新しい歴史教科書をつくる会』や日本会議を設立。彼らは『反日包囲網が敷かれている』という被害者意識を募らせていきました。’97年2月の『諸君!』の朝日新聞広告には、米中韓が一体となり日本の戦争犯罪を追及する事態への警鐘を鳴らす記事が見られます」
慰安婦や南京大虐殺などの歴史認識問題において、日本の右派は「自分たちは犯罪をでっちあげられて責められている」と考える。そうした被害者意識ゆえの攻撃性が、使う言葉に表れるのだろう。
【岩下 結氏】
「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」事務局。書籍『NOヘイト! 出版の製造者責任を考える』の発刊に携わる
【能川元一氏】
研究者。右派論壇誌などを研究対象としている。共著に『海を渡る「慰安婦」問題』(岩波書店)、『憎悪の広告』(合同出版)など
― なぜ[ヘイト本]は売れ続けるのか? ―
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