雑学

自衛官が戦場で負傷をしたら保険はいくら下りるの?



 戦場で命を懸けて戦ってくれた兵士が負傷して帰って来たら、その面倒は国がみるべきだと私はずっと思っていましたし、当然そういう制度があるのだろうと思っていろいろと探しました。確かに、労災にあたる「公務災害」という制度はありますが、それはあくまでも「普通の職場で起きた災害」のためのものです。怪我が癒えるまでの医療費は認められれば出ますが、その後の生活の保障はありません。つまり、怪我が落ち着くまでの保障でしかないのです。もちろん、普通の労災なら同時に民間の生命保険金が出ますから、それで生活を手当することができます。障害者年金と生命保険金があれば、生活もどうにか困らないでしょう。

 でも、戦争(有事)で派遣された自衛官には民間の生命保険は下りないかもしれないわけで、場合によってはその後の生活に充てるお金はゼロになるかもしれないんですよ。尊い志を持って国のために危険な場所に赴いて、文字通り命懸けで任務を遂行したにも関わらず、怪我をしたら(保険金の戦争時の免責が発動すれば)保険金はゼロになるのです。ゼロに!

 災害救助で命を懸けた場合には普通の生命保険は下ります。しかし「戦場の場合には出ない」という重大なカラクリに気づいている人は少ないのではないかと思います。

 少し前、駆け付け警護が話題になった時に賞恤金が9000万円に上がったという報道が流れました。ネット上でも多くの人が「自衛官ってそんなにもらえるのか!」と話題になっていました。障害でも確実に最高額がもらえるのであれば生命保険がなくても生活できそうですが、もちろん、そんなうまい話ではありません。賞恤金の最低額は490万円です。過去の例でも特別な功労があり、しかも死亡した人でなければ最高額の賞恤金は出ていません。

賞恤金に関する訓令

賞恤金に関する訓令。防衛省より

 負傷し障害を負った自衛官は仕事を辞めろとは言われませんが、職務の性質上、健康な人とともに任務を果たせるとは思えません。希望すれば事務官への移行も可能ですが、怪我の状況によっては仕事を辞めざるを得なくなることもあります。すると無職になります。公務災害の場合、ある程度治療が落ち着くと医療費の支給は終わります。

 米軍では戦場で負傷した軍人の医療費は一生涯無料です。ある一定の勤続年数を超えて部隊に所属している隊員であれば、怪我をしたらすぐに恩給が付きます。

 国を守るために戦って負傷した自衛官に対して、国ができるのが生活保護と障害者加算だけ、それでポイと放り出す。こんなことでは誰も戦場には行けません。

 このような保障制度の改革は国会以外にはできません。軍人が命令で戦い死傷したならば、国は本人と家族に十分に報いるべきではないでしょうか。誇りある国家として早急に保障制度の見直しを検討するよう、心ある皆さまに強く訴えたいと思います。<文/小笠原理恵>

国防ジャーナリスト。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰
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