トイレットペーパーまで自腹の自衛隊。予算がなくて「トイレを封鎖」する基地も
「自衛隊ができない40のこと 32」
防衛大綱の策定年度にあたる今年、自民党は防衛予算を対GDP比の2%まで引き上げる提言を上げています。防衛予算が2倍になることは歓迎です。これまで部隊が行動するための必要経費すら出せず、削りに削られてきた自衛隊の内部予算。すでに様々なところにしわ寄せが来ています。あまりにも予算が足りないために、他の省庁では見られないような涙ぐましい節約や、本来なら必要経費で賄うものを「隊員から集めたお金で買っている」という情けない状態が一部の部署でさらにエスカレートしているのです。
そもそも自衛隊の予算は無駄(とされるもの)を極限まで切り詰めています。カツカツの状況で「GDP比1%」の枠内に無理やり予算を収めてきたのです。でも、考えてみてください。自衛隊のやることは領海領空警備、ミサイル防衛や災害対応にしても、そもそも計画など立てられないものばかりでしょう? いつ北朝鮮のミサイルが飛んで来るかなんて予想できないのに対処するのです。周辺諸国の脅威が増え、領海近くにこんなにも軍艦や爆撃機や潜水艦が頻繁にやって来て、ミサイルも頻繁に飛んで来る計画など立てられません。それでも予算内で対処しようとするため、当然、しわ寄せが来ます。
その目に見える形が自腹構造です。自衛隊は組織として十分にものが買えず、修理やメンテナンスにも費用が確保できなくなります。結果として困るのは現場の隊員たちなので、彼らの中でお金を出し合って買えるものは購入しているというのが実情です。
だからトイレにこんな貼り紙が貼られたりします。
「トイレットペーパーはすべて私物購入しています。」
自衛隊の置かれている現状を理解するのに些末ですが一番象徴的なのがこの「トイレットペーパー自腹問題」です。以前にもこの問題を取り上げたことがありますが、そのやり方がさらに深刻化しているようです。
もちろん自衛隊にだってトイレットペーパーを買う厚生費と呼ばれる予算はあります。しかし、これは概ね「一回あたり45cm」として隊員の数や平均的なトイレの回数を積み上げて計算された予算なので、足りなくなっても基本的に補充はされません。それでは隊員が困るので、仕方なく自分で外から買ってくるわけです。基地内で1ロール100円の値段で売っているのを見かけたこともあります。高いじゃないかと突っ込むのは本論とは違うので我慢したいと思いますが、それもトイレットペーパー自腹が常態化しているから起こった現象なのです。
さらに、自腹もまずいと考えた基地側の次の手がなんと「トイレ封鎖作戦」でした。
ああ、その手がありましたか!と話を聞いてさらに笑っちゃいましたが、トイレを封鎖すればトイレットペーパーがなくても平気です。考えましたね。でもありえないです。
さすがに基地名は出しませんが、トイレットペーパー節約のためにトイレの封鎖を行っている部隊を見つけました。ペーパーがなくなるとトイレを使えないように封鎖するのです。たしかにその手を使えば隊員がトイレットペーパーを自腹で買わなくても済み、予算も抑えられるでしょうが、閉め出された隊員はどこか他所をあたるしかありません。ペーパーのある閉鎖されてないトイレを探してさまよい、それでもどうにもならなければ、外のコンビニに駆け込むのです。なんていうか、「ああ!無情」な気分です。そこまでして自衛隊に節約を強いる国はどうなっているのでしょうか?
トイレットペーパーを買う予算もない
トイレを封鎖、困ったらコンビニに駆け込む
1
2
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
記事一覧へ
『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
記事一覧へ
『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ