核兵器よりも恐ろしい「北朝鮮AI兵器」が日本を襲う
核やミサイルの開発を進め、日本に脅威をもたらし続ける北朝鮮。米朝が一触即発状態のなか、日本もかつてないほどの緊張感に包まれている。しかし、核の脅威に加え、今後は北朝鮮の新たな兵器に備える必要がある。各国で開発が進むAI(人工知能)兵器だ。しかも、北朝鮮はかつてAI大国だったのだ!
11月中旬、国連で「キラーロボット(自律兵器)」に関する公式会議が開催された。同会議に詳しい、拓殖大学海外事情研究所・佐藤丙午副所長は「この手の話題が国連で議題にされるのは初めて」と、詳しい経緯について説明する。
「そもそも同会議は、特定通常兵器使用制限条約などに基づき、地雷やクラスター弾など非人道的な兵器について議論してきた会議でした。その場所で、(AIを利用した)自律型ロボット兵器関連の話題がいよいよ取り上げられることになったのです」
ここ数年、米国やロシア、中国を中心に、AI兵器を開発しようという動きが盛んになっている。同会議ではその拡散を規制すべきか否かが議論されたという。
人間が手を加えずとも任務をこなすAI兵器は、すでに各国で配備が進む。例えば、北朝鮮との軍事境界線に配置された韓国軍の警備ロボットや、ロシアのICBM施設の警備システムだ。いずれも怪しい対象を自動的に検知し、人間のオペレーターに対して攻撃指示を仰ぐ戦闘マシンである。なおイスラエルも国境警備や軍事施設の防衛に自律性の高い兵器(ドローンやロボット)を投入している。
「自律兵器にもさまざまなタイプがありますが、現在、国際的に特に問題視されているのは無人戦闘機です。なお、AIを使った自律兵器は『半自律兵器』と『完全自律兵器』に分けられる。半自律兵器は最終的に人間が確認・攻撃決定をするが、完全自律兵器は作戦すべてをAIがこなす。開発中の米無人戦闘機『X-47B』など、完全自律兵器もいよいよ実用段階にきている。ただ、開発に莫大な資金と技術力がかかるという課題があります」(軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏)
世界的にAI兵器が注目されるなか、10月には興味深いリポートが発表された。韓国産業銀行(KDB)が公開した「北朝鮮の人工知能開発状況と展望」だ。あまり世界に知られていない北朝鮮のAI開発の歴史と現状を分析するなかで、同リポートは北朝鮮の囲碁AI「ウンビョル」やAIアシスタント「竜南山」の存在に焦点を当てていた。ウンビョルは「朝鮮コンピュータセンター」が’97年に開発したAIで、グーグル・ディープマインド社の「アルファ碁」が登場する前まで、何度も優勝して世界を席巻する性能を誇っていた。しかし、同リポートでは北朝鮮のAI開発はハードウェアに投資する余力がなく、先進国レベルには達していないと結論づけた。
昨今、核兵器やミサイルの開発に注力する北朝鮮だが、将来的にAI兵器を開発する可能性はあるのだろうか。韓国の大手軍需企業の関係者は言う。
「数年前まで、北朝鮮のソフトウェア技術は世界的に高かった。国内で毎年プログラムコンテストが開催され、開発者が奨励されるなど環境が充実していた。ウンビョルが’09年頃まで世界のコンピュータ囲碁大会を席巻していたのが、その紛れもない証拠でしょう。ただその後、めっきりと状況が掴めなくなった。それでも北朝鮮が引き続きAI関連の技術開発に取り組んでいるのは確実でしょう」
一方、前出の佐藤氏は「いわゆる初期型AIの本質は情報処理能力の高速化」と前置きした上で、北朝鮮のAI開発リソースについてこう分析する。
「北朝鮮はサイバー攻撃部隊を強化しているといわれていますが、そのことからある程度のAI開発能力は保有していると推察できる。ただし、ニューラルネットワークなどをベースにした第3世代のAIは、情報の伝達を高速化する必要があり、大型コンピュータおよびシステムが不可欠。そのため北朝鮮には限界があると思います。また、最新のAIはアルゴリズムの設計が複雑になるので、北朝鮮の開発能力には疑問が残ります」
かつて最強を誇った北朝鮮の囲碁AIのDNAが甦る!?
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