雑学

放置すれば突然死の危険も。健康診断の盲点、トリプルリスクとは?

 食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足などにより、放っておくと太りがちな働き盛りのサラリーマン。そうなると心配なのが健康診断だ。

「自分はメタボとは診断されてないからまだ大丈夫」

「異常値も1つ、2つ程度だったから平気でしょ」

 そんなふうに油断している人もいるかもしれない。しかし実は、健康診断だけでは見つかりにくい疾患リスクもあることをご存じだろうか?

健康診断の結果を過信すると危険


「たとえば血糖値や血中脂質などの数値は、食後に上がるもの。そのため、空腹時に行う健康診断で異常値が出なくても、実は血中脂質が高かったり、初期の糖尿病の状態だったりする人もいます。また、血圧のピークが朝にある『早朝高血圧』の人も、健康診断では血圧が高いことが分かりません」

 そう話すのは、「かくれ肥満」という造語の生みの親としても知られる岡部クリニック院長の岡部正氏。あまり知られていないが、「血圧」「血糖」「血中脂質」のいずれかが高い場合、他の2つの数値も悪化する可能性が高い。これを「トリプルリスク」と呼んでいるという。

「高血圧、高血糖、高血中脂質の3つとも、インスリンの働きが悪くなっていることが大元の原因。そのため合併率が高くなるんです。そして2つ、3つと症状が重なると、動脈硬化による狭心症や心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高まってしまう。突然死の原因の大半は動脈硬化による心筋梗塞ですから、そのリスクも高くなってしまうんです」

多くの人がメタボの定義を誤解している!?


 メタボリック・シンドロームの診断基準は、「腹囲が男性85㎝、女性90㎝以上」かつ「高血圧・高血糖・脂質代謝異常の3つのうち2つに該当」。つまり、トリプルリスクの予防に役立つ診断なのだが、「メタボ=ただの肥満と誤解している人が多い」と岡部氏は指摘する。

「血圧、血糖、血中脂質の3つを日常的にケアしている人は少ない。そして、内臓脂肪が増加して腹囲が大きくなった状態を、トリプルリスクの危険信号と理解できている人は少ないんです。実際のところ、メタボ検診が始まって10年ほど経過していますが、高血圧性疾患、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の患者数はむしろ増加しています」

「腹囲が男性85cm、女性90㎝以上」という基準は身長を度外視したもの。そのため身長が低い人には甘く、身長が高い人には厳しすぎる数値と言え、「『腹囲が身長の半分を超えたら危険信号』と考えるべきだと思います」と岡部氏。

「また現時点では腹囲がメタボの基準以下の人でも、20歳を超えてから太った人は生活習慣病等のリスクが高い。大人になってから増えた体重は、よほど運動を続けている人でない限り、大半が脂肪です。そのため、もともと痩せ型で、大人になってから10kgほど体重が増えた人は、内臓脂肪が付きすぎの可能性があるんです」

 では、血圧、血糖、血中脂質の数値が上がってしまう原因は何なのか。岡部氏は「やはり乱れた食生活と運動不足」と話す。

「食生活については、塩分の摂りすぎ、脂肪分の摂りすぎ、糖分の摂りすぎ、量の食べ過ぎなど、人により原因は異なるでしょうが、それらの要素が混合しているケースがほとんど。塩分の高いものを食べればご飯もお酒も欲しくなりますし、脂肪分の高い料理は塩分も高いですからね」

トリプルリスクを回避するには?


 トリプルリスクの危険性を避けるためには、一体何をすべきなのか。

「まずは減量ですね。最初は体重の3%減を目標にして、月に1kg程度の無理のないペースで進めましょう。無理な減量をすると筋肉量も減りますし、その後リバウンドで体重が戻ったときは脂肪しか付かないので、以前と同じ体重でもさらに脂肪が多い状態になってしまいますから。そして運動も、『デスクワークの時間が長い人は立つ時間を増やす』『一日の歩数を1割程度増やす』などからはじめましょう。特にメタボと診断されている人は、動脈硬化による心筋梗塞等のリスクが高い状態なので、急にハードな運動をはじめるのは禁物。過去にはメタボの人を対象に体質改善に取り組んでいた自治体で、運動中の人が心筋梗塞で亡くなったケースもありました」

 では食生活については何をすべきなのだろうか?

「まずは自分の食生活のどこが乱れているのか把握しましょう。飲み過ぎなのか、量を食べ過ぎなのか、脂肪分の多いものを食べ過ぎなのかによって、改善すべき点も変わります。なお、塩味の濃いものを食べているとご飯の量もお酒の量も増えますから、薄味を心がけるのは大切です。そしてコンビニや外食等では、意識して野菜を摂ること。またコンビニ弁当はご飯の量が多めなので、無理して全部食べずに残すのもいいでしょう」

 大事なのは、健康診断で異常値が出たり、メタボの診断を下されたりする前から、上記のような健康にいい生活習慣を身につけることだ。

「『まだ自分は何の自覚症状もないから大丈夫』と思う人もいるかもしれませんが、その自覚症状がないことが恐ろしいんです。先述のように、健康診断では見つからない疾患リスクもありますし、実際に人間ドックで心臓に異常は見られなかった人が、2週間後に心筋梗塞で急死した……というケースもありましたから。また20歳を超えてから太っていき、30代、40代でも生活習慣の改善をしなかった人は、60歳前後になってから高い確率で病気が出てきます」

 そんな病気や突然死を避けるために必要なのが、トリプルリスクを意識することと、太り過ぎ(内臓脂肪の増加)をその危険サインだと自覚することだ。健康診断は毎年無事にクリアできている一方で、「ちょっと太ってきたかな」と自覚がある人は、今の自分の健康状態や生活習慣を早い段階から見直しておこう。

【岡部 正氏】
医学博士。銀座・岡部クリニック院長。日本病態栄養学会評議員、日本糖尿病学会認定専門医・指導医、日本肥満学会会員などを務める。ベストセラーとなった『隠れ肥満に目覚めよ』(青春出版社刊)ほか著書、メディア出演も多数。

<取材・文/古澤誠一郎>

提供:トリプルリスクを考える会





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