原作者と映像化作品の距離感とは?
久住:『孤独のグルメ』のドラマで、五郎は一度だけ福岡に来てるんですよ。
うえやま:スペシャルで来ていましたね。松重(豊)さんって福岡県福間市の出身なんですよね。同窓会に来ないかなあ……来たらみんなでキャアキャア言いにいこうって地元の方が話していたらしいですよ(笑)。
久住:博多スペシャルで五郎が行ったのは、中洲の一富ってお店だったんだけど。僕のコーナー(ドラマの後の「ふらっとQUSUMI」)の撮影のために現場に行ったら、ちょうど先に撮影を終えた松重さんにお会いしたんです。そしたらそのときすごく小さい声で松重さんが「今日の店、かなりですよ」って言ったんですよ。そんな小さな声で言わなくていいのに(笑)。でも、小さな声で言うときって本当のことだから、本気でおいしいって思ってるんだなってわかりました。
うえやま:実際おいしかったですか?
久住:本気でおいしかったです。あまり知られていない店みたいなんですけど。あとはおかしかったのが、シーズン6で茗荷谷の中華料理屋(豊栄)が登場したときのこと。「今シーズンはスペイン料理(スペイン食堂 石井)が一番だと思ってたけど、中華料理のほうがうまいかもしれません!」って松重さんが俺に言ったから、じゃあ、絶対放送前に行こうと思って。放送されると混んじゃうから。それで、バンドのメンバーとミニアルバム完成祝いで行ったんですよ。それで食べてたら、松重さんが家族で入ってきたんです!あれはびっくりした。 超偶然。「あ、ああ」ってお互いてれ笑いしながらこそこそ挨拶して(笑)。
うえやま:でも、お仕事で行かれて、本当においしいから家族でまた来たって、いいですね。
久住:ええ。ほんとにおかしかったです。うえやまさんは、漫画に出てくる料理は毎回必ず自分で作ってるんですか?
うえやま:作ってます。洋菓子関係は奥さんのお兄さんが得意だったので、そこでよく教えてもらったりして。僕が作ってないのは1400回のうち3回くらいですね。
久住:1400回のうち3回! すごい!
うえやま:作れなかったのもあるし、あとは、山菜の料理はなんかあくぬきとかがめんどくさくなっちゃって。僕はドワーッ、ドビャー!って感じのどんぶり料理みたいなのが好きなんですよ。ちまちまちょこちょこしたのは……まあそれはそれで楽しいんですけど。楽しめなかったときは、ああもうめんどくさいなあってなっちゃう。
久住:漫画を描くって、そもそもちまちました作業ですからね。
うえやま:そうですよね。もう漫画描くのめんどくさいですよ(笑)。
久住:僕もめんどくさいです。細かいこといろいろ描くのがめんどくさくて、それでもう和泉(晴紀)くんに描いてもらおう、谷口(ジロー)さんに描いてもらおうってなって今に至るという。ちなみに、『クッキングパパ』はアニメ化されたこともあるんですよね?
うえやま:ずいぶん前ですけどね。あのとき、『クレヨンしんちゃん』と『名探偵コナン』がほぼ同時にアニメ化されたんですよ。僕だけすぐ終わった……。ほかの2つはまだ続いてますからね。なんででしょうね、僕も一緒に続けてほしかったですよ。
久住:1400回超の漫画なんだから一番長く続くはずなのに。
うえやま:続いてたらいまごろ蔵が建っていてもおかしくなかったのに(笑)。3年で終わりましたね。
久住:でも3年も続いたんですね。
うえやま:原作者が煙たがられるんですよ……。脚本読んで、「ここちょっと違うかなあ」なんて言おうもんなら、アニメ会社の偉い人がとんできてご飯食べながら「まあまあまあまあ。そこをひとつなんとか」って。
久住:アニメはちょっと変えようと思っただけで何百枚とかの直しになるから、大変なんでしょうね……。
うえやま:原作者なのに「またアイツが何か言ってる」って……(笑)。