久住：最後に、うえやまさんがどんな音楽を聴いてこられたのかを伺いたいです。 うえやま：フォーククルセイダーズに始まって、岡林信康さん、そして吉田拓郎さんの音楽に出会って、ガーン！ってやられて。そこから、その後のオシャレな音楽にいくのではなくて、それより前の高田渡さんなんかを聞くようになりました。オシャレなのはガラじゃなかった。ユーミンとか（笑）。 久住：僕がフォークを聴き始めたのは中学くらいのときですね。エンケン（遠藤憲司）がすごく好きでした。 うえやま：素晴らしかったですよね。東京にいるとき何回か聴きにいきました。髪が長くて、でもかわいらしい顔で。 久住：高田渡のことを、エンケンが「ワタル！」って呼び捨てにするじゃないですか。あんな年上のことを「ワタル」とか呼んでる！って思ってたけど、エンケンより高田渡のほうが年下だったんですよね。 うえやま：高田渡って若くして死んでますからね。50代。 久住：ものすごくおじいさんだと思ってましたよね。 うえやま：70歳くらいかと思ってました。福岡にもライブに来てたんですよ。『クッキングパパ』の第1回に登場するイタリアン鍋は高田さんから習ったんです。九州ツアーのときに家にいらしてくれて、料理作って酒飲んで。そのときにいくつか教えてもらったうちのひとつが第1回のイタリアン鍋なんです。 久住：そんな関係があったんですね！ うえやま：電話で、「あれ描いてていい？」って聞いたら「いいよ～っ」て（笑）。 久住：『クッキングパパ』と高田渡がつながるなんて！ うえやま：ローストチキンも高田渡さんが教えてくれました。「こうやって揉むだけ揉んでね、女の人みたいに」って（笑） 久住：その話が聞けたでも今日来た甲斐がありました（笑） 【ライブ＆トークを終えて】 　うえやまさんは、声がいいんです。やわらかくて、深くて。話す声もいいけど、歌もいい。とくに高田渡の歌が合ってる。モノマネじゃなくて、落ち着いてて、どこかユーモラスで、とぼけていて。ああいう味はなかなか出せない。「クッキングパパ」のマイペースなニュアンスに似ています。「何を俺は綺麗事書いているんだ」というテレとゆとりが、いつもありますね。息子さんのギターのサポートがすばらしくて、息の合い方はさすが親子（笑）お店の雰囲気もすっごくよかった。うえやまさんの作ってくれた、打ち上げの真っ黒いおでん、忘れられない味です。おいしかったぁ。またこの店でライヴしたいです（久住）。 　久住さんは完ペキなプロのミュージシャンでしたね。アマチュアのボクとは格が違います。オリジナルCDも何枚も出していて曲もすばらしく、オチもフウシ（？）もバシッと効いてるんですね。そして唄もうまく、声もいいし、ノドも強い!!　唄いまくる久住さんを見ながら「すごいな～!!」と思いましたバイ！　QUSUDAMAのメンバーの2人の女性もメチャクチャうまい。自由に唄いまくる久住さんを完全サポート！　綿密な打ち合わせをしてる場面を見て「なるほどな～!!」と思いましたバイ!!　久住さんにとってはマンガも音楽も、おもしろい～、楽しい～と思ったことを表現していくということでは同じなんですね。名曲「味が落ちた～♪」のフレーズがずっと頭の中で鳴りつづけています（笑）。とても楽しかったですね。聴きにきた人たちも大満足で「よかった～！　楽しかった!!」と帰っていきましたよ。こっちに来ることがあったら連絡ください。またやりましょう!!　※そのときはどんな料理で打ち上げしようか。今からワクワク考えときま～ですバイ。（うえやま） ●久住昌之 漫画家・音楽家。 58年、東京都三鷹市出身。’81年、泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として漫画誌『ガロ』でデビュー。以後、漫画執筆・原作、デザイナー、ミュージシャンとして活動を続ける。主な作品に『かっこいいスキヤキ』（泉昌之名義）、『孤独のグルメ』（原作／画・谷口ジロー）、『花のズボラ飯』（原作／画・水沢悦子）ほか著書多数 ●うえやまとち 54年、福岡県福岡市出身。第14回手塚賞に応募した『くだらない勇気』（上山敏彦名義）が佳作入選し、その後上京しデビュー。80年に福岡県に戻り、84年から現在まで続く長寿連載『クッキングパパ』の連載を開始。15年、『クッキングパパ』で第39回講談社漫画賞特別賞を受賞。現在は福岡県福津市で執筆活動中 取材・文／牧野早菜生