更新日:2018年04月21日 13:23
エンタメ

『孤独のグルメ』井之頭五郎が『クッキングパパ』に会ったら? 久住昌之氏×うえやまとち

久住:あはは、まあかかるお金が全然違うんでしょうね。ドラマはその点ラクかもしれない。僕は何も考えないで、松重さんのやりたいようにやってくださいって言ってるんですけど。中国でドラマになったこともあるんですよ。ちゃんと「ゴロー」って名前なんだけどゴ(名字)・ロー(名前)なんですよ。僕の作った主題歌も使っているんだけど、サビの「ゴロー ゴロー イッノッカシッラッ フーッ」のところはどうなるのかと思ったら、いつまでも「ゴロー ゴロー ゴロー ゴロー」ってループしてるの。「イノカシラ」にいかないの。びっくりした!あれは笑いました。 それで、中国からシナリオも送られてきたんだけど、家族構成が書いてあって、五郎のお父さんはマフィアのボス!(笑)。お母さんは五郎を悪の道に入れたくないから、パリの大学に留学させて、それでパリでグルメになったと。五郎がグルメになる前提が書いてあったんですよ。 うえやま:それで、OKしたんですか? 久住:まあ、日本だったらありえないけど、中国だったらいいんじゃない?って(笑)。でもドラマを観てみたら毎回人情ものみたいになってた。でも食べるところがものすごくぞんざいだった。日本の寿司を食べるシーンがあるんだけど、イカの握り、醤油をつけないで食べてましたから。日本の店なのに何にもつけないって、ずさんだなー(笑)。一方で、食べるトコだけものすごくカット割りしてたり。日本版は何カメも使ってるけど、松重さんは1回しか食べてない。音も生で録ってる。いままでNG1回くらいなんですって。 うえやま:それはすごいですね。 久住:共演した人は必ず「松重さんすごい」って言いますね。ああいうふうに撮られるとものすごく恥ずかしいし、きれいに食べられないような気がするんだけど……。 うえやま:そうですよね。はずかしいよね食べてるとこって。 久住:松重さんの演技は、音を立てて食べたりもするんだけど、それが品のない感じには見えなくて、むしろおいしそうにみえるのがいいなって思います。松重さん、20歳のころに、ザ・ブルーハーツの甲本ヒロトと、下北沢の同じラーメン屋でバイトしてたそうなんですよ。30年くらい経って、ヒロトに「松重、テレビ観てるけどさ、まかないの食い方と一緒だよ」って言われたそうですよ。パンクと役者の、ビンボーな若者二人がまかないの飯一緒に食ってたたわけで、今ドラマを観たら感慨深いでしょうね。 うえやま:久住さんは、ドラマの音楽も手がけているんですよね。全部オリジナルってすごいなあ。どうやって作ってるんですか? 久住:映像を観てから作る時間なんて、もちろんないから、脚本を読んで「イタリア料理の店かあ」って、イタリアっぽい音楽を作ったりとか。技術がないんで、考え過ぎず軽い気持ちで作るようにしています。とんかつが出てくれば、とんかつをガツガツ食う感じの音楽とか。 うえやま:とんかつをガツガツ食う感じの音楽(笑) 久住:キャバレーが出てくればキャバレーっぽい感じの音楽(笑)。ドラマのシーズン1が始まるときに、局の人に「音楽どうするんですか?」って聞いたんです。そしたら、「いや、お金ないんで後輩に打ち込みで作らせようと思ってる」とかいうから、「じゃあやらせてください」「でもカネないですよ」「お金なんていいからやらせてください!」って話して、担当することになったんですよ。 うえやま:僕も、アニメのときはエンディングテーマを……。 久住:やったんですか!? うえやま:いや、そんな話は全然なかった(笑)。考えてたんですけどね。『Good night baby』(ザ・キング・トーンズ)の替え歌で「きっといつかは君のパパも作ってくれる~」(原曲では「きっといつかは君のパパもわかってくれる~」)って。全然相手にされなかった……。 久住:でも、いいアイデアじゃないですか(笑)。結局おもしろいほうがいいですよね。『クッキングパパ』にはその気持ちを感じます。 うえやま:いつもなんとなくバカな話を作りたいんですよね。真面目なことを描くと「何を俺は綺麗事を描いているんだ」って思っちゃう。
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