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「“人食いザメ”は映画『ジョーズ』が生んだ誤解」世界唯一のシャークジャーナリストを直撃

 出没すれば海水浴場は遊泳禁止になり、映画に登場する際はいつも凶暴な生物として描かれる。多くの人にとってサメは「人間に襲いかかる恐ろしい生物」という認識だろう。ところが、そんな現状について“シャークジャーナリスト”の沼口麻子氏は「あまりに誤解されすぎている」と嘆く。世界でたった一人というその職業の実態からサメ業界の秘話までを沼口麻子氏に聞いた! 沼口麻子

サメだけを危険視するのは明らかに誤解なんです

――サメが好きすぎて今のお仕事に就かれたとのことですが……そもそもシャークジャーナリストというのはどういう職業なのでしょう? 沼口:シャークジャーナリストは私が考えた肩書なんです。そのため、この仕事をしているのは世界で私しかいません。主な仕事はサメに関する執筆や講演会、イベント、メディア出演などです。世間のサメへの認識があまりに間違っているので、この現状を少しでも変えたいと思って活動しています。 ――誤解とは、例えば? 沼口:細かい話だと、キャビアってサメの卵じゃないんですよ。サメに関する仕事をしているというと、たいてい「キャビア好きです!」と言われるんですが、チョウザメは実はサメではありません。 ――恥ずかしながら、ずっとサメの卵だと思っていました……。 沼口:また、最大の誤解としては、サメが人を食べると思われていることです。映画『ジョーズ』などの影響が大きいようなのですが、実際は人食いザメなんか存在しません。サメは人間の溺死体を食べることはありますが、生きている人間を積極的に食べにくることはあり得ません。そもそもアザラシなどに比べて、食べるところが少ないですし、サメからしたら人間を食料として認識していないんです。「サメが襲ってくる」というのは単なる人間の自意識過剰なんですよ。 ――それでは、なぜサメに襲われる事件がときどきニュースになるのでしょう? 沼口:たまたまサメを刺激してしまった不幸な事故にすぎないことがほとんどです。残念なことに腕など体の一部を失ったという話はよく耳にします。これこそが、サメにとって人間は全身を食べたいと思うほどの食料ではないという証拠かと思います。サメじゃなくても、野生動物は刺激すると攻撃してくるのは当たり前ですからね。サメが凶暴ならば、イルカやシャチ、アシカとかはもっと狂暴ですよ! むしろイルカのほうが知能が高い分、漁師さんが獲った獲物を集団で奪いにきたりしますし、タチが悪いケースもあるんです。 ――サメだけが厄介者扱いされるほどの危険生物とは言えないと? 沼口:その通りです。こういった誤解について、研究者ご本人がメディアで説明できればいいのですが、研究しながらだとなかなか物理的に難しいところがあります。それに、日本にはメディアに積極的に出て、サメの情報発信をする機関もありません。だから、私がその役回りをやろうと思いました。 ※8/21発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです 【沼口麻子】 ’80年、東京都生まれ。東海大学大学院海洋学研究科を修了後、OL生活を経て、現在は世界で唯一の「シャークジャーナリスト」として、世界中のサメを取材し、その魅力を発信。著書に『ほぼ命がけサメ図鑑』がある 取材・文/朝井麻由美 撮影/岡戸雅樹
週刊SPA!8/28号(8/21発売)

表紙の人/ 浅川梨奈

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