元貴乃花親方に洗脳騒動が起こったのは1998年の秋場所直前。兄である花田虎上を拒絶し、彼の相撲を批判するようになった元貴乃花親方に対して、父であり師匠であり、先代の貴乃花でもある二子山親方は、懇意にしている整体師から「洗脳されている」と発言したのだ。 　もともとは体の調子を整えるために、数年前から整体師のもとへ通っていたようなのだが、徐々に精神的な面を支えてもらうようになっていき、最終的には、相撲の取り口を指導されるまでの関係になっていたのではないかと噂されている。真相はわからないこの騒動だが、これをキッカケに、兄弟の関係悪化が表に出てきたことは確かだ。 　兄弟で活躍し、ブームを巻き起こした二人だったが、そんな彼らには、現役時代から確執があったことは周知の事実。元貴乃花親方が、実兄の名前に“氏”をつけて、「勝氏（まさるし）」と呼んでいる姿からは、異様な空気が漂っていた。 　幼少期から比較され続け、注目され続けながらも、仲睦まじい姿を見せてきた二人。不仲になった詳しい原因はわからず、花田虎上も「原因は一つや二つではない」と語っている。だが、前述の洗脳騒動が大きな引き金になったのは間違いないだろう。 　ことが大きく表面化し、報道されたのは2005年、先代・貴乃花の葬儀の喪主を巡り、対立したことがキッカケだった。遺骨の管理や、遺産相続についても意見は合わず、溝が深まってしまったようだ。 　現在では、母・藤田紀子さん（71歳）ともども、元貴乃花親方と絶縁関係にあるとされる花田虎上。また、家族が揃った姿を見ることはかなわないのだろうか。 　2017年に起きた、当時の横綱・日馬富士による貴ノ岩への傷害事件。貴ノ岩の態度に不満を持った日馬富士が激怒、カラオケのリモコンで殴るなどしたという話は、連日大々的に報道されたため、覚えている方も多いだろう。 　この事件の対処を巡り、旧態依然とした体制の相撲協会と、頑なに主張を曲げない元貴乃花親方の意見の相違は明確で、対立は激化。それ以前から反目する場面の多かった両陣営だったが、この事件以降に確執は決定的なものとなり、元貴乃花親方の親方引退につながった。 　――横綱として偉大な成績を残しながらも、土俵の外では常に問題を抱えてきた元貴乃花親方。幼少期から相撲一筋だった彼は、親方を引退した後に何をするのだろうか。選挙への出馬も噂されるその今後から、まだまだ目が離せない。＜文／後藤拓也（A4studio）＞