恋愛・結婚

「夫は発達障害かもしれない」その気づきが夫婦を救った――光武克の「発達障害BARにようこそ」

夫婦

発達障害だと知ることで夫婦間のズレを正せることもある

 古賀さんは自閉傾向の強い旦那さんと一緒に暮らすことで、自分が病気になるまで追い詰められてしまっていました。旦那さんの自閉傾向の強さを知ることで、自分も受診するきっかけとなったのです。まだ治療は始まったばかりでしょうけど、夫婦で是非この困難を乗り越えてほしいと思います。  古賀さんと違い、僕は自分の特性が著しく偏っていることを自覚したときにはすでに夫婦間のズレが修正不可能なほど大きなものになっていました。特に、僕は言語性に特化した脳機能を持っているため、元奥さんから言葉で言われたことを、言葉通りにしか理解することができなかったのです。  極端な例を挙げると、一度「あなたのことが好き」と言われたら、「あなたのことが嫌い」と言われるまで、相手のなかで起こっている感情の変化に目を向けられないのです。僕の脳内では、「好き」と言われたら、新しく情報がアップデートされるまでずっと「好き」という感情が持続していると考えてしまうのです。本当に機械みたいなやつだなと思います、我ながら。 光武「僕は一度離婚を経験しているので、古賀さんは離婚にいたる前にお互いに向き合う時間がつくれてよかったと思います。僕の記事がきっかけでそういってもらえるなら、なおさらです。」 古賀「本当に私たち夫婦を助けてくださってありがとうございます」  僕は自分がピエロであればいいと思って生きてきました。僕のような失敗ばかりの人間だって、その失敗を笑ってもらえたら少しくらい人の役に立てるんじゃないかなと。でも、まさかこんな形でお礼を言ってもらえるとは思ってもみませんでした。この瞬間は涙が出るほどうれしかったです。道化になる以外の方法で僕は人の役に立てるのかと。新しい自分に出会えたような気がしたのです。 「お礼を言うのはこちらのほうですよ、古賀さん」。そういいながら僕は頭を下げました。正直、嬉しくてちょっとだけ涙が出そうだったんですが……ほかのお客様からの「光武さ~ん、お酒作ってよ!」との声で現実に戻ります。 光武「はい、かしこまりました。古賀さん、ちょっと行ってきますね」 古賀「光武さん、お話聞いてくださってありがとうございました」  今日もブラッツは満員御礼です。では接客頑張りますかね。今回もご愛読ありがとうございました。それでは、またのご来店お待ちしております。 光武克の「発達障害BARにようこそ」*お客側の登場人物はプライバシーの問題から情報を脚色して掲載しています。 <文/光武克 構成/姫野桂 撮影/渡辺秀之>
(みつたけ・すぐる) 発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」のマスター。昼間は予備校のフリー講師として働く傍ら、‘17年、高田馬場に同店をオープン。’18年6月からは渋谷に移転して営業中。発達障害に関する講演やトークショーにも出演する。店舗HP(brats.shopinfo.jp) ツイッターアカウント「@bar_brats
1
2
発達障害グレーゾーン

徹底した当事者取材! 発達障害“ブーム"の裏で生まれる「グレーゾーン」に迫る


■姫野桂氏の新刊発売記念イベントが開催!
12月20日に姫野氏の新著『発達障害グレーゾーン』の発売記念イベントが開催される。特別協力として関わった「OMgray事務局」のオム氏、株式会社LITELICOの鈴木悠平氏を招き、3人が「発達障害っぽさを抱えて生きる方法」についてトークする。

【日時】12月20日(木)19時開演(18時45分開場)
【場所】神保町「書泉グランデ」7Fイベントスペース
【参加方法】姫野桂 著「発達障害グレーゾーン」(820円・税別)を1Fでご購入いただいた方に、参加券を配布(定員50名)
【予約】電話(03-3295-0011)・メール(grande@shosen.co.jp)で予約可能
*詳しくは書泉グランデHPで(https://www.shosen.co.jp/event/89535/
おすすめ記事