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発達障害の当事者対談「早稲田大学に入るよりコンビニバイトのほうが難しかった」

 昨年からさまざまな場所で耳にするようになった「発達障害」というフレーズ。その種類は主に以下の3つにまとめられる。

《発達障害の種類》

■ADHD(注意欠陥・多動性障害):失言やケアレスミスに悩まされる傾向がある。また、多動で落ち着きがなく、複数タスクをこなすことに困難を感じる。

■ASD(自閉スペクトラム症):独特のマイルールをもち、環境の変化や急な予定変更に合わせられない。言葉の裏の意味を読み取れず、冗談も通じないため人付き合いに支障をきたす。

■LD(学習障害):知的な障害はないにも関わらず、漢字の読み書きや簡単な暗算ができない。

 発達障害はこれまで未成年の問題だと思われてきた。しかし実際には大人になって社会人生活を送る人の中でも、その症状で苦しむ人は多いことが明らかになってきている。

姫野桂×借金玉 だが、実際にそんな“生きづらさ”を抱える当事者たちの生の声はなかなか聞こえてこない。フリーライターの姫野桂氏が8月に上梓した『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』は、日本人の10人に1人が発達障害を抱えると言われながら、その実態が見えない当事者たちの声を集めた証言録である。

 一方、自身も発達障害の当事者であり、そのうえで「本当に役立つ」ライフハックを記した『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』がベストセラーになった借金玉氏。発達障害を最前線で見守り続ける2人に、クロストークを展開してもらった。

「日本一意識が低い自己啓発書」が売れた理由


姫野:借金玉さんの著作はベストセラーになっていますね。

借金玉:ありがたいです。発達障害当事者に向けて書いたのですが、定型発達(発達障害ではない)の人にも読んでもらえた結果ですね。

姫野:そもそも、ここまでが定型発達でここからは発達障害という明確な基準がないですよね。それに職場や学校などで周りに「発達障害かもしれない?」と思うような人がいると、それを理解しようと思って読んでいることも多いかもしれませんね。

借金玉:私の本は「日本一意識が低い自己啓発書」を名乗ってるんですが、朝まったく起きられない人が起きるためのライフハックから語っている本って案外なかったんでしょうね。朝が苦手なのは発達障害者の特徴のひとつなので書こうと思ったんですけれども。私はもとより、周りにも発達障害をかかえる人が多いので、本を書く際のサンプルはたくさんありました。

姫野:借金玉さんは現在のご職業に就く前に、経営者をやられてましたよね。雇用主としても発達障害当事者と関わる機会はありましたか?

借金玉:ありましたね。何度教えても消費税の計算ができない人がいたときは困りました。計算の概念が理解できず、電卓を叩く順序が絶対に覚えられないんですよね。彼女のために、電卓を叩く順序を紙に書いて机に貼り付けてあげることでなんとか解決しました。

姫野:私も計算が苦手で、昔アルバイトでレジ打ちをしていたのですが、いつまで経っても要領が悪く、すぐに辞めてしまいました。

姫野桂借金玉:私自身もコンビニ弁当工場のアルバイトをしていたときに、何度教えてもらっても、フライヤーを使って揚げ物を作ることができなかったことがあります。そのときは店長に「言いづらいんだけど、キミは知的障害者だと思うよ。僕が言わないと誰も言ってくれないだろうから言うけど」と言われましたよ(苦笑)。

私からしたら、早稲田大学に入学するよりも、コンビニバイトをマスターすることのほう難しいんですよね。それで心から敬意を評して「早稲田入るよりもコンビニバイトのほうが難しいんですよ。店長のこと本当尊敬します」って言っちゃって(笑)。あのときはこの言葉が皮肉に聞こえるってことも理解できなかったんですよね。

極端に空気が読めないのも発達障害の特徴ですが、長い時間をかけてだんだん人に失礼をしないようにできるようになりました。

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発達障害者に向いている職業

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私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音

事、家族、人間関係、二次障害―。ADHD、ASD、LD、彼らの悩みと望みとは? 発達障害当事者、22人のリアル。




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