雑学

なぜか「発達障害の人ばかり集まる」お店の日常とは?――光武克の「発達障害BARにようこそ」

 東京・渋谷にある発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」。ここは、マスター以下スタッフのほぼ全員が“発達障害の当事者”であるバーです。当店には毎晩、僕らと同じように発達障害の悩みを抱えたお客さんたちがいらっしゃいます。そんな生きづらさを抱えた方たちが少しだけ羽を休めに立ち寄るバーの日常を、僕、マスターの光武克(みつたけ・すぐる)がご紹介します。

 はじめまして。発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」のマスター、光武克です。昼は予備校でフリーの講師として働き、夜はこのお店に立って、たまにはこうして執筆活動もしたりしています。ちなみにバツイチです。

 ところで、皆さんは発達障害という言葉をどの程度、ご存じですか? 厳密に説明すると、発達障害というのは、発達障害者支援法のなかで「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの 」と定義されています。

 ちょっと難しい説明でしたが、おおざっぱに分類すると、自分の世界に閉じこもりがちな「自閉症スペクトラム症」(ASD)、注意欠陥と衝動性が強い「多動性注意欠陥障害」(ADHD)、そして特定分野(例えば計算だけ異常にできないなど)の理解が著しく低い「学習障害(LD)」の3種類が、一般的に知られています。

 そして僕自身、ADHDとASDの傾向が強いという診断を受けています。そんな人間が代表を務める空間ですから、集まるスタッフもお客様も“発達障害の特性”で苦労なさっている方が多くなっているんです(とはいえ、発達障害じゃない人が入店NGというわけじゃないですよ!)。

 僕は毎晩この場所でそんなお客様といろんな話をさせてもらっています。ちなみに、場所柄もあって、ここにいらっしゃるお客様は「発達障害で悩んでいるけど、それでもなんとか一般企業で働けている」という、会社員の方が多いです。

「誰かに悩みを打ち明けたい」と訪れるお客さんたち


 蒸し暑い8月後半のある日、そんな会社員の一人である森永さん(仮名)というお客様が訪れました。森永さんはすでに10回以上来店してくれている常連様です。年齢は30代前半、結婚はなさっていらっしゃいません。

 今回は森永さんとのお話を通して、簡単な僕の自己紹介をしたいと思います。

森永「光武さん、今夜も遊びにきたよ」

光武「いらっしゃいませ。今日もいつものハイボールですか?」

森永「うん、安いウイスキー使ったハイボール、よろしく」

光武「かしこまりました(笑)。少々お待ちくださいませ」

 汗で張り付いたシャツをパタパタさせながら、森永さんはいつものように美味しそうにハイボールをグイっと飲み干してくれました。

 森永さんはここ最近、いらっしゃるたびに仕事の悩みをこぼします。ご友人には比較的恵まれているとのことですが、職場環境に関してはいくつか不満を抱えていらっしゃるようです。

森永「マスターみたいに(仕事が)うまくいけばいいんだけどね」

光武「僕もなかなかしんどいですよ。お店もようやく形になってきた感じですし」

森永「俺は今の職場が合っていないと思うんだよ。光武さんはどうやって自分に合った仕事を見つけたの?」

光武「そうですね……自分に合った仕事なのか自信はないですけど、今の予備校講師とバーの仕事が最初からピッタリはまっていたかというと、そうではないように思うんですよ」

森永「でも、お店でも話すのがうまいし、誰でも物おじしないで話せるでしょ?」

光武「それがそうでもないんです。基本スペックはポンコツなので、仕事のミスはたくさんありますよ。今日だってなんかメールを開く気持ちになれなくて、立ち上げるまで1時間かかりましたから。もう仕事にならないので、メールを開くという作業だけお店のスタッフにお願いして、ようやく仕事に取り掛かれました」

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発達障害特有のツラさ

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