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カレン・ロバート日本復帰。事実上“引退”からカムバックしたイングランド7部リーグ生活を語る

 果たしてどんな環境で、どんな選手たちがプレーしているのか。 「基本的に若い選手が多く、33歳のオレはもちろん最年長。セミプロなので、選手は学生か、時間の融通が利く仕事をしていますね」  練習は基本、火・木曜で土曜が試合。だが、水曜に試合が入ることも多いという。 「カップ戦を含めれば年間で50試合ほどあるからスケジュールはかなりハードです。練習開始は19時で、オレの住んでいるロンドン西部からレザーヘッドまでは路線バスを乗り継いで道が混んでいると片道2時間くらいかかる。最初は電車で移動していたけど、こっちの電車はよく止まるし、電車(往復約2040円)より安いバス(往復約880円)で通っています」  プロ入り後、公共のバスを使って練習や試合に行くのはもちろん初めて。レザーヘッドでの給料は週300ポンド(約4万4100円)ゆえ、贅沢はできないと笑う。
カレン・ロバート

練習や試合へは2階建てのロンドンバスで。「支払いは自腹」

「普通に考えたら、物価高のロンドンでそれだけでは生活できませんが、オレはロンドンの知り合いの家に居候させてもらいながら、なんとかやっています」

4―3―3のトップ下でチーム3位の3得点

 昨年11月某日、レザーヘッドのホーム、フェッチャム・グローブで試合を観戦した。スタジアムに着くと、7部リーグとは思えない試合運営がなされているのに驚かされた。集まった観客は300人ほどだったが、試合は大人10ポンド(約1450円)と有料で、マッチプログラムまで販売され、スタジアム内には小さいながらファンショップやバーも併設されていた。  ピッチで繰り広げられているのは、昔ながらのキック&ラッシュと呼ばれるイングランド式サッカーで、華麗さこそないが、ゴール前の迫力は十分。そんななかカレンは、4-3-3のトップ下。ここまでリーグ16戦のうち13試合に出場(先発9試合)、チーム3位の3ゴールを挙げている。 「トップ下っていっても、ほぼこぼれ球を拾う係(笑)。リーグのレベルはともかく、フィジカル的には今までやってきたどのリーグと比べても圧倒的に激しい。空中戦の迫力はハンパないし、グラウンドがぬかるんでいて、ドリブルしたらボールが踊りだしますから(笑)。ここでやっていくには、とりあえず相当なメンタルの強さが必要です」  かつて日本代表を目指した選手がプレーするには、いささか酷な環境にも思えるが、モチベーションはどう保っているのか。 「正直、(世界最古のカップ戦として名高い)FAカップに懸けていた部分があったので、その予選4回戦で負けたショックは大きいです。あと4回くらい勝てれば、プレミアのクラブと対戦できる可能性もあったのに……。FAカップの注目度はハンパないし、そこで活躍して今冬に4部や5部くらいのクラブに移籍できたらと思っていたんです。まあ33歳のおっさんの移籍って正直かなり厳しいんですが、なんとか残りの試合で結果を出してアピールしたいです」  サービス精神が旺盛で、ときにユーモアたっぷりに自身の現状について話してくれたカレンだが、プレーする姿は真剣そのもの。そんなカレンにはもう一つの顔がある。彼は今、千葉県木更津市で将来のJリーグ入りを目指すローヴァーズFCというクラブのオーナーでもあるのだ。海外でのプレー経験は、選手としてのステップだけではなく、クラブ経営にも生かせる部分が多いという。 「J3だって、5000人規模のスタジアムが必要になりますし、こっちでスタジアムやクラブ運営を見ることは勉強になるんです」  ローヴァーズFCの“ローヴァーズ”とは“さすらい人”という意味とのことだが、まさに世界のサッカー界をさすらってきたのがカレンである。 「オランダからタイに行ったときに、もう代表は難しいと思ったし、路線が変わっちゃったみたいな感じはありました。だって、スパンブリーのスタジアムって、虫がブンブン飛びまくっていましたから(笑)。だけど、ローヴァーズFCはタイや韓国、インドでプレーしてきた“貯金”でつくれたことも間違いないし、後悔はないです」  紆余曲折を経て、カレン・ロバートは、今も楽しげにボールを蹴り続けている。
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“飽くなき挑戦”は続く
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