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令和元年の大相撲夏場所。新たな時代に期待したい力士たち

 新元号「令和」として新たな時代が始まる中、大相撲夏場所(5月12日初日)で話題の中心となるのが新大関・貴景勝。22歳、上昇気流の真っ只中だ。
両国国技館

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 先場所の千秋楽、栃ノ心との一番では迷いなく前に出る力強い相撲で10勝目を挙げ、大関昇進を手繰り寄せた。まさに貴景勝の会心の取り口を繰り広げ、取り組み後、感極まる表情からは若さも伝わってきた。  それでも夏場所からは乗り超えなければならない「壁」も少なくない。

貴景勝は課題を乗り越えるか?

 最近3場所の星取表をみると二桁勝利こそ続けているものの白星は減る一方であり、先場所では終盤戦で負けが続いた。11日目の横綱・白鵬戦ではかち上げを喰らう立ち合いからの激しい攻防の末、最後はがっちりと組まれ転がされる。  14日目の逸ノ城戦での敗戦も、前に出ようとしながら足がついて来ず中途半端な内容に。突進力を封じられると攻略もされやすいという一面も併せ持っていて、ここ二場所、15日間を通しての安定感は感じられなくなっている。場所後、白鵬は「四つ(相撲)も覚えろ」と、若い新大関に叱咤ともとれるコメントを残した。  同世代の御嶽海には過去5場所勝てずにおり、好敵手に対する苦手意識も今後へ向けての課題の一つだ。先場所も出足を見極められ、終始ペースを握られて何もさせてもらえなかった。  夏場所以降、「新時代」を引っ張る役割を否でも担う貴景勝。唯一無二の武器として磨きをかけてきた重みのある突き押しは輝きを増すか、それとも更なる成長を促すための課題として色濃く映し出されるのか。高まる期待とは裏腹に置かれる立場はより一層、過酷なものとなるだろう。新大関、そして二度目の賜杯への期待と共に22歳は岐路を迎えている。

番付下位から再び再出発を図る豊山

 昨年の名古屋場所千秋楽。この場所において念願の初優勝を果たした御嶽海の千秋楽の相手となったのは、時津風部屋の豊山だ。14日目までで御嶽海の優勝が決まっていたものの、豊山も11勝を挙げており、千秋楽で勝ち星上位の二人が相対した。この取り組み、攻守が目まぐるしく入れ替わる激戦を演じ、結果は豊山が土俵際で放った投げにより勝利。優勝力士に土をつける劇的な白星を手にするとともに、次場所以降の活躍も大いに予感させる内容を残した。  だが翌秋場所からなんと4場所続けての負け越し。先場所は西前頭16枚目で3勝12敗。5日目から11連敗を喫し、最後まで持ち味を発揮できずに千秋楽を終え、自身3度目となる十両への陥落が確実となった。  2016年、3段目付出でのデビューから勝ち越しを続け、5場所で関取となり「怪物」との異名でも呼ばれた時期もあったものの、明らかに壁にぶち当たっている豊山。「力ずく、馬力で持っていく相撲」(2016年新十両会見にて)と本人も語るようにとにかく前に出る押し相撲が得意の形ではあるものの、二桁の黒星が幕内在位半数の4場所を数えるなど好・不調の波が大きすぎる感が強い。また、場所毎に安定した相撲をみせており着実に番付を上げている同期の朝乃山の存在も、現段階においては大きな差をつけられたと言って間違いないだろう。  初土俵から3年が過ぎた。新時代を担う同年代は番付を上げていき、優勝力士にも名を連ねている。後れをとった「怪物」はもう一度這い上がるため迷いのない押し相撲を取り戻せるか。
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琴奨菊、ベテランとしての存在感
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