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「コロナが怖いから休む」はアリ? 力士や会社員のケースを弁護士に聞く

 大相撲の力士が、コロナ不安を理由に休場を申し出たところ、引退を余儀なくされる出来事があった。世間では協会の対応への批判もあるが法的にはどうなのか、また一般企業で「コロナがこわいから休む」は通用するのか、弁護士にきいた。

出るか辞めるかの法的解釈は

 1月9日、大相撲の佐渡ヶ嶽部屋に所属する序二段力士の琴貫鐡(本名・柳原大将)が、SNSで引退を表明。コロナ禍で、両国まで相撲を取りに行くのが怖いため休場を申し出たが、協会から「コロナが怖いで休場は無理だ」と言われ、出るか辞めるかの選択肢しかなく引退をすることになったという。この協会の対応にネット上では批判が相次いだ。極端な二択の選択肢しか与えない、協会の対応について、法的に問題はないのか?  ベリーベスト法律事務所の松井剛弁護士は「問題ないとは言い切れないですね」という。同氏は「契約をどう解釈するかによります。過去の裁判例を見ると、力士と相撲協会との関係は民法ができる以前からあることなどを踏まえ、雇用関係とはいえないという判断がされているんです」と話し、そのため労働基準法や労働契約法は適用されないようだ。しかし、それでも心臓疾患があったという琴貫鐡の抱えるリスクによっては、出場を命じることが違法になる可能性もあると指摘する。

今回の引退は仕方なかったのか

 心臓に疾患があったという琴貫鐡の心情と判断に対し、休場という選択肢を提示しなかった理由について協会は「休場には診断書の提出が必要」だとしている。休場を認めないことがパワハラに当たらないのかについても気になるところだ。 「パワハラの定義の中に『職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に』という文言があります。今回の場合でいえば、『職場内』といえるかはさておき、協会は琴貫鐡に対して『優位性』があるといえるでしょう」とした上で、もし琴貫鐡が争うとすれば「協会として感染対策がどれほどなされていたか、また、自身が抱えていた疾患がどの程度だったかということなどを踏まえて、出場を命じることに妥当性があったのかという部分で争うことになるでしょうね」(松井弁護士)  さらに、もし琴貫鐡が引退もせずコロナ禍が過ぎるまでは出場もしないとした場合、協会側は解雇の措置などを取る可能性があるが、そうなった場合は「『地位確認請求』を行い解雇が不当であると争うことが考えられます」と言う。  いずれにしても、もし裁判になった場合、特殊な契約関係の中でのやりとりなので、松井氏としても「とても興味深いですね」と話すほど特例的な案件であることは間違いない。
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一般企業で「休むなら辞めろ」はアリ?
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