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第536回 5月19日「しゃべる作家」

・読み切りのショートショートを毎日1本書いている。その様子を、アイデア出しから完成まで全て生放送(YouTubeとニコニコ)で公開している。 ・休まず続けて今日で19日、つまり19作品が仕上がっている。これらの小説については、そのメイキングの動画記録が(半永久的)に残るということになる。 ※たとえばこの小説は→第11話「完全なるアイドル」 ※こうやって出来た→渡辺浩弐のノベライブ・第11夜 (※これまでの完成作品→『令和元年のゲーム・キッズ』) ・そして昨日、星海社の名物編集者・太田克史さんからお話を頂き、ありがたいことに書籍化も決定した(ツイッター上で声をかけて頂き~そのままコメントのやりとりだけで刊行が決まった……その間わずか10分)。 ・デジタルメディア上で創作している作品だからこそ、紙の本の刊行はうれしい。その本に載っている小説の全てについて、その執筆プロセスを動画として確かめることができるようになるわけだ。これは世界初のことだと思う。 ・書籍は物質的に残る。そして動画も、流動的に残っていくものである。10年後、20年後、あるいは100年後、ぼろぼろになった本を誰かが手にしてめくってみて、もし面白いと思ってくれたら、ネットで検索してくれるかもしれない。そうしたら、その小説がまさに生まれるその瞬間の映像が出てくるはずだ。これ、ちょっと面白いと思いません? ・さて。作家のスタンスでYouTuberのまねごとをしているうちに、予想外の発見もあった。小説執筆に音声入力を使うと劇的に効率が上がるということだ。 ・配信のためにしゃべりまくりながら書く方法としてこの機能を使ってみることにしたわけで、執筆の能率が落ちることは覚悟していたのだが、むしろ逆だった。音声入力機能はすでに本業のライターや作家が使うのに十分なレベルになっていた。キーを打たなくてもいいというだけでなく、考えるまましゃべりまくればそれでどんどん小説が書けてしまう。 ・コツは、誤入力が表示されてもどんどんしゃべり続けることだ。前後の文章によって言葉の意味を確認して、後から前に戻って言葉が修正されるから。30年近くキーボードで小説を書き続けてきたけれど、すぐに、9割以上を声で入力するようになった。とにかく楽で速い。このおかげで、1本のショートショートを1時間半程度で書くことができるようになっている。 ・しゃべることが面倒でない人は、この方法でどんどん文章が書ける。スマホだけでいきなり面白い小説を書いてデビューしちゃう人もいるだろう。今活躍している世代の作家はパソコンのおかげで小説を書けるようになったという人が多いと思うが、今後は、音声入力を活用して作家になる人が激増するはずだ。そんな執筆風景をそのままライブ配信する人が増えたら、小説家とYouTuberの境界はなくなっていくかもしれない。 ・と、ここまで考えて、別の状況もありえると気付いた。やがて文字の小説を読む人はいなくなり、作家も表現の場所を動画に求めていかざるを得なくなる、そんな未来。 作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。


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