更新日:2023年03月28日 08:57
仕事

大手企業からベンチャーに転職したら…プライドが邪魔した転落人生

 数週間後、若手社員に海外赴任の辞令が下りるとの噂が。しかも、場所はマレーシア。Tさん馴染みの国である。 「間違いなく出世の近道。僕の故郷といえるうえ、ジャカルタ視察の件もある。マレー語を話せるヒラ社員は僕だけでしたし、ほぼ当確だと目されていました。正直、期待しまくりでしたよ」  実際、Tさんに内示があった。ところが赴任先は縁も所縁もない上海。むこう3年ほど工場の監督をして欲しいとのこと。 「愕然としました。だって、中国語わかりませんから。同期含め、適任者は他にいくらでもいるんです。何か、体良く押し付けられたような気がしちゃいました」  マレーシアで暮らしていた頃の体験から、中国人に対して抵抗があったことも、ポジティブに受け止められなかった要因とか。 「周囲は微妙なリアクション。一応、出世コースではありますが、既存の持ち回り赴任に過ぎません。なぜ、Tなんだろう? というムードはあった気がします」  中国語が使える独身の若手は少なくない。稀少な言語をマスターしている自分がわざわざ行く必要あるのか。 「マイノリティランゲッジ修得者のプライドみたいのが芽生え、もっと“僕でなきゃできない仕事がしたい”と思ってしまったんです。まぁ、上司先輩の覚えが良いつもりでしたから、調子乗っていたんでしょうね。若かったです」  多少の考える期間をもらったものの、最終的に拒否してしまう。

ベンチャー企業に引き抜かれて転職

「同じ頃、ベンチャーに転職した友人からスカウトされていまして……。彼の先輩たちが立ち上げたのですが、シンガポールやマレーシアなどで、業務用キッチン器具をリースする企業でした。正直、今の会社にいづらくなったら、引き抜きに応じてしまえば良い! と思っていたのも断れた要因でした」 退職願 結局、ほどなくしてTさんはスカウトを受諾。マレーシア支社長に就任し、すぐに現地勤務へ移った。 「支社長とはいっても、部下は誘ってくれた友人含め3人だけ。しかも、マレー語はおろか英語もおぼつかないメンバー。僕が営業すべてを担わないといけない状態でした。それでも基本給は1.5倍。歩合給もありますから、奮闘しましたよ」  頑張った甲斐あって早々に顧客は増え、想定以上の収益が上げられた。部下たちも少しずつ戦力になり、大企業では得られなかった満足感まで得られたそう。 「転職に猛反対した両親や、以前の会社の仲間から馬鹿にされずに済むと一安心。僕の代わりに上海赴任した同期も順調と聞いていたので、なおさらでした」
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ところが約4年後には…
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編集プロダクション勤務を経て、2002年にフリーランスとして独立。GETON!(学習研究社)、ストリートJACK(KK ベストセラーズ)、スマート(宝島社)、411、GOOUT、THE DAY(すべて三栄書房)など、ファッション誌を中心に活動する。また、紙媒体だけでなくOCEANSウェブやDiyer(s)をはじめとするWEBマガジンも担当。その他、ペットや美容、グルメ、スポーツ、カルチャーといった多ジャンルに携わり、メディア問わず寄稿している。

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